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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 正体
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昨晩、誰かがこの部屋に来ることは無かった。だからといって今日も何も無いとは限らない。
 僕の役目が脅威から彼女たちを守ることである以上、二人との別行動はできるだけ避けたいのだ。

「だからって……クライス、あなたこの子を闇ギルドとの戦いに巻き込むつもり?」
「そんなことはしないさ。見つかるつもりは無いから戦闘になる場合はこちらから仕掛けるときだし、僕が派手に動いて安全なところにいてもらうよ」
「……それでもウェンディに危険が及ばない確証はないけど、ここにいるよりはあんたの近くのがましかしらね」
「だろ。ウェンディちゃんはどう? 正直ドラゴンとの戦闘になる可能性もある、君の補助魔法を当てにさせてもらう場合もあるかもしれない」
「…………」

 少しずるい言い方をしたかもしれない。
 ドラゴンの情報を求めてきた以上、遅かれ早かれこの事態に巻き込まれていただろうが今回の場合はウェンディちゃんが原因といってもいい。
 そんな負い目に付け込むような言い方はあまりいい方法とはいえないが、見るからに戦闘自体嫌いであろうこの子を連れ出すにはこれしかない。残していくのは危険すぎる。
 それに、ドラゴンとの戦闘でこの子の補助魔法が必要になるかもしれない、それは事実だ。滅竜魔法、そう銘打たれた魔法の使い手である僕たちだが、実戦経験などあるはずも無いのだから。

「……わかりました。クライスさんの迷惑にならないように、が、がんばります!」

 小さく震えながらではあったが、はっきりと僕の目を見ながら言ってくれた。
 ごめんね、と心の中で謝っておく。
 だが今回のことはお互いの教訓としてしっかり刻まれたはずだ。

「よし、よく決意してくれた。そうと決まればすぐ行動だ、行こう」





 ササナキ周辺の森は、背の高い常緑樹によって囲まれており幸いなことに身を隠す場所には困らない地形をしていた。昨晩からずっと曇天の空も、影ができ辛く日中行動する上で助けとなっている。
 そんな森の中を、僕は疾走していた。
 木から木へ、できるだけ葉を落さず、枝を揺らさないように静かに。だがすばやく走り抜ける。
 これだけ多くの木が並ぶ森の中、荒い大地を走るよりはずっと効率的だ。
 こんな風に走り出してからどれくらい時間がたっただろうか、実際はそれほど経っていないのだろうが様々な要因からくる緊張が僕の思考を加速させている。
 まずはドラゴンの正体だ。思っていた以上に危険な状況に陥ってしまったが、だからこそ期待だけが高まる。可能性は低い、そうわかっていてもいることを前提に思考してしまうこともしばしば。早く真相を確かめてみたい、行動に制限が付く前は感じなかった興奮と焦燥が混ざったような感覚だ。
 次にササナキのこと。宿を出る際、一応依頼のた
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