【白竜編】 正体
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にこんな山奥から監視されながら依頼を届けることは難しい。
だから、たとえウェンディちゃんのような子供だとしても、そしてその所属するギルドが戦闘ギルドという確証がなかったとしても、わらにもすがるような思いで依頼したのだろう。
そして、そんな必死な様子の女性にウェンディちゃんは思わず依頼を請け負うと、解決してみせると約束してしまったらしい。先ほどの地図も、昨晩明日の朝食でばれないようにもって行くと約束したものだった。
化猫の宿は生産系ギルドである。補助系の魔法や戦闘後に使う治療の魔法ならばともかく、戦闘系の魔法を使えるものはいない。いるのは僕という先日加入したばかりの新人だけだ。
つまり、戦闘系の依頼を請け負った現状解決できるとしたら僕だけということになる。
「ごめんなさいクライスさん……。私、気持ちが舞い上がってました。こんな風に噂を追って遠くまで来て、あんなふうに誰かに必死にお願いされるなんて始めての経験だったんです」
「……その気持ちはわからなくも無い。君の身に降りかかる危険や戦闘を回避し請け負うのが役目って言ったのは僕だし、初めてばかりで興奮したのもわかる。とはいえ、闇ギルドだけでなくドラゴンに敵対されるとなると僕でも命の危険がある」
「……ごめんなさい」
「ちょっとクライス! この子だって悪気があったわけじゃない、そんなに責めないで」
「あったら困る、命に関わるんだ。衝動で毎回危険な任務を持ってこられたらたまったもんじゃない」
命に関わる。その言葉は一週間前ウォードッグに喰い殺されそうになった二人にしてみればそれがどんなに恐ろしいものか予想が付かないことはないだろう。
一時の気の迷いと勢いに任せて身の丈にあわないことをしてしまうのは、子供とはいえ、子供だからこそ危険なことだ。
悪気が無いのも、激しく後悔しているのも理解している。
実を言えば僕は自分の力に自信を持っているし、いざとなったら切り札もある。もし相手がドラゴンだったとしても命を奪われるまではいかないだろう。だからといって今回何も言わず解決できたとして。ウェンディちゃんはさらに僕を信用し無茶な依頼を衝動で受けるかもしれない。
信用は嬉しいし、頼ってほしいとは思う。だが今後もこの少女と共に行動し、ドラゴンの噂という何があるかわからないものに飛び込んでいくのだとしたら衝動的行動を控えてもらうために多少後悔してもらう必要がある。
……と、いう考えから多少きついことを云ったのだが。
「……ごめんなさい」
うっ……。
今にも泣きそうな声で謝罪している姿は、少々言いすぎた感が否めない。子供に対して命がどうとか責めるような、生々しく惨い言葉を使うのはやりすぎだったかもしれない。
子供の相手など昔護衛で馬車の
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