プロローグ
第一話:少年は次の世を見やる。
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思考が戻り、考えたくない方へと思考が傾いて行く。
テレビなどで見た事のある機材に今聞いた言葉、目の前に広がる自分よりも明らかに大きい顔、そして産声や上手く動かない体。
……俺は、もしかして…………赤ん坊となっているのか?
「なあ、名前は決めてあっただろうか、優子さん」
「今決めちゃいましょう……ふっと浮かんできた名前があるの」
そして即ち、こんな状況に陥っている、と言う事は―――――
「麟斗……この子の名前は、麟斗よ」
「良い名前だ」
俺は……あの時に、既に死んていた……のか?
「お、おぎゃああああああっ! おぎゃあああああっ!!」
「うおぉ……や、やはり顔が怖いのだろうか……?」
「フフフ……大丈夫よあなた。これから頑張っていきましょう」
目の前に羆の様な顔がある事も、医者達が駆けずり回る様子も、女性の温かみのある声も、俺の耳には入らない。
信じられない事実に、受け入れられない結果に、産声にしか変わらない絶叫を上げるのみだ。
その声にこもった感情を……抗いや恐怖など、赤子が泣いているようにしか見えないこの状況で、他に誰が理解してくれようか。
俺は涙を流し、声を上げ続けた。
例え無駄だとしても、何の意味も持たないと分かっていても……声を上げずには居られなかった。
両親と仲が良かった訳では無く、兄や姉に弟や妹も居なかったが、冷えて居れどもそれなりに不自由ない生活をしていたのだ。
世界に何の不満も持っていなかったと言えば嘘だ。もう少し楽しい学校生活を送りたいと思った事も、もう少しストレスのない生活が欲しいと思った事も、温かい生活を望んだ事もある
だが、俺にとっての当たり前が 冷たい世界であり―――そんな俺が何故、行き成り死ぬ事になってしまったのか。
世の中の理不尽を、不平等を、俺はこの時人生で……前世も含めれば本当に初めて、心の底から呪った。
それと同時に、目の前に居る新たな両親であろう彼らには、複雑な感情をいだかずには居られないのだった。
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それから途轍もない速さで月日がめぐり、漸くゆっくりと時間が流れて行くよう感じた頃には俺は五歳となり、そこから徐々に日は過ぎて今現在は八歳となっていた。
「……クソっ」
思い出したくもない思い出が脳裏に浮かび、麟斗と新たに名付けられた俺は、不快感を隠しきれずに小さく毒吐いてしまう。
突き刺さった心の中の棘は、今でも尚しつこくとれる事は無い。
「はい京平さん、あ〜ん?
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