それはある日突然に
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はバツ印に斬り上げた。強制的に槍が上げられ、腹部ががら空きになる。
(しまっ……!)
剣の一撃が飛んでくるかと思いきや、無銘の手に握られていたのは二丁の拳銃だった。気付いた時には遅く、銃弾が槍兵の腹部に炸裂する。
「がぁ!?が、かぁあああ!!?」
腹部に広がる激痛。見れば弾丸によって穿たれた穴の周りがぶよぶよとした感触の肉の塊になっていた。『冷たい』激痛。まさか、これは―――――――
「液体、窒素だとォ……ッ!!」
油断している暇はない。痛みをこらえ、再び槍を構える。それは戦士としての意地だったが、既に無銘は彼の視界から消えていた。
気配を感じ、右下を見る。身体を低くした無銘が素手でこちらに向かって来る。
「テメェ、飛び道具を使うなど……!剣士の……戦士の誇りは……ッ!!」
「残念だったな槍兵。私は戦士を愛する。私も戦士であろうとしている。だがな、確かに銃器を使う戦士もいるのだよ。そして、私は確かに剣士であろうよ。だがな、それは間違いであるともいえる。私は」
「拳士だ」
怪我を負った腹部へとこの世界でも五本指には入るであろう鉄拳が炸裂する。
「ぐ、があああああ!!!」
吼える槍兵。驚愕する無銘。
(あの傷を負い、さらにそこへ拳を打ちこまれたにもかかわらずまだ立つか!)
激痛が波となって槍兵を襲う。馬鹿げている。その怪物じみた精神力と誇りを、素直に無銘は認めた。
「槍兵、貴君の名前を聞いていなかった。教えてもらえるか」
「……ケンプファー。覚えておきな、無銘」
ケンプファー。ドイツ語で信念の為に活動する闘士や戦士のことを指す。素晴らしい名前だと褒め称えつつ、無銘は拳を構える。同時にケンプファーも槍を構える。
互いに最高の構えを取る。そして、ケンプファーが飛びはね、その槍を空中で構える。
(投擲か!だが……)
ただの投擲ではない。槍とケンプファーから尋常ならざる気が満ちていたのである。
「さぁ、持って行け!全て焼き尽くし灼熱が槍ァ!!」
この瞬間。因果が逆転する。無銘が全てを放つ前―――――――この戦いが始まる時へと槍は因果を超えて行く。
始まりの無銘はその赤い槍を見た。そして無異能体質故、自身の力全てを持ってそれを受け止める。灼熱は収まり、強制的にケンプファーへと帰還させられる。
「防いだか、最高の一撃を」
そして『今』に至る。無銘の掌は火傷ができ、ケンプファーの手には槍が戻っていた。
「ああ、防ぎ切った。だが、今まで見てきた槍の中でも凄まじき威力をするな君のその槍は。大方、最高の威力を持つ槍が、君の異能――――――私の予想では因果を逆転させる能力、その
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