それはある日突然に
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しつぶされていた。父の手の爪は全て剥がれていた。痛そうな顔はせず、こちらを見て笑っていた。気付いた。父は私が抜け出せるスペースを作っておいてくれたのだ。
「出なさい」
父はそう言って優しく微笑んで私を送り出した。私は自然と涙が出ていた。痛々しい姿。生まれてからずっと育ててくれた家族のそんな姿を見るのは当時の私には辛かった。
助けようとした。いくら痛くても構わなかった。けれど父は言った。
「私はいい。みんなを連れて助けなさい」
父は笑顔でそう言い、それきり動かなくなった。私は父の言う通りに行動した。
そして私は――――――――
正義の味方になった。金属が突き刺さる音。否、無数の武器が突き刺さる音。血染めの拳、血濡れの剣。血染めの銃弾、血染めの穂先―――――――――――――。
泣くことも許されない。休むことなど断じて。走る。走る――――――
人を救う。誰かを救う。何もいらない、誰かが幸せになった結果が欲しかった。なのになんだ。なぜこうなった!死ぬのが怖くて犠牲者を増やした。それが正しいと思えなくても生きていたかったから傲慢にも走り続けた!!
後悔した。人を殺して殺して殺しつくして後悔した。違う、これは殺人鬼だ。正義の味方などではない。決して自分の意志ではない。だが……血に染まっているのは私だ。
昔のことを思い出しながら起きた。窓には朝日が差し込んでいる。隣には酔いつぶれたクロウリー。立ち上がってキッチンへ移動し、ベーコンエッグを作ろうと手を洗う。クロウリー用のは既に作って冷蔵庫だ。トーストを焼く。焼いてるうちに作ったベーコンエッグを乗せ、かぶりついてスーツに着替えた。
「行くか」
そして私は玄関を出た。
「おはようございます」
職場に来た僕はまず先に皆さんに挨拶した。皆さんそれぞれ返してくれて、自分に与えられた席に着く。
隣の席は書類や本が錯乱していて、使い物にならなそうに見えた。誰の席かわからなかったので通りかかったシンラさんに聞いた。
「此処って誰の席ですか?」
「ああん、隣の席か?無銘さんの席だよ。まぁ……」
とシンラさんはニィ……と笑い、後ろにいた赤毛の女性―――――――カオルさんを指さしていた。
「あいつが片づけるのめんどくさいから読んだ本とか、全部無銘さんのとこに置いてんだよ」
「五月蝿いぞ、イヌぅ!」
カオルさんの『重い』一撃がシンラさんの脳天に叩き込まれる。
「うごぅ!?テメェやりやがったなクソ女!」
今度はシンラさんが弾倉のない銃を取り出す。
「やめんかアホども」
いがみ合う二人を背の高い男、無銘さんが首に手刀
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