暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 1
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の頭を撫でてるマリアに目線だけ送れば、「私?」と首を傾げられた。

「私はレゾネクトから逃げてきたのよ。レゾネクトは……なんて。本当は、私達がどうとか、そういうことを聞きたいわけじゃないのよね? 良いわ。貴方には言葉で説明しても無駄でしょうから、私が見聞きしてきたすべてを直接()()()あげる。絶対にアリアを見捨てないと約束してくれるならね」
「アリアは知らん! 用があるのはロザリアだ!」
「……どちらでも同じだと思うけど?」
「どこがだ!? あんな女とロザリアを一緒にするな!」
「ここまで追いかけてきたのだから、薄々は気付いているのでしょうに」

 苦笑いを浮かべたマリアが俺の前に立つ。
 足と腕を精一杯伸ばして……

 ……おい。待て、コラ。
 何をするつもりだ、この子供。

「不思議ね。レゾネクトと同じ悪魔でも、貴方は全然怖くないわ。アルフの親友だから、かしら」
「はぁあ? 親友? ざっけんな。アルフリードは元(えさ)だ。元・エサ!」

 届かないと思ったのか。
 一旦両腕を下ろして姿勢を低くした後、勢いよく飛び跳ねる。
 俺の首に両腕を引っ掛けてぶら下がるつもりらしい。
 動けねぇが、重さは感じるんだぞ! くそガキ!

「貴方の頭の中に『空間』を作り、私の記憶を映し出します。アリアを……ロザリアでも良いわ。彼女を……」

 首にしがみついたマリアの顔が、呼吸を感じる距離まで迫る。
 俺に幼女趣味は()ぇっつーの!

()()()()、助けて」

「!」

 思わず開いた唇に、小さな唇が触れる。
 まっすぐ俺を覗く薄い水色の虹彩に映り込んだ光が、微かに揺れた。

「……もう大丈夫です、フィレス様。ベゼドラを解放してください」

 腕を解いて着地するマリアに、フィレスは頷いて応える。

「『害意無き者に 自由を』」

 意識の制御を失った俺の体がぐらりと傾き、花の上に仰向けで倒れた。

 ちくしょう……状況に振り回されてるのが腹立つな。

 頭の中、一瞬一瞬を切り取って一枚ずつ絵にしたようなたくさんの画像が渦を巻いて流れていく。
 その中に、見覚えがある顔の、見慣れない表情が無数。

 ああ……。
 お前、……マリアには、こんな風に笑ってたのか……

 ……アルフリード……


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