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第一章
カルタゴ人と海の妖精
昔々カルタゴという国がありました。
アフリカにあった港町ですがここにです。一人の商人がいました。
商人はあちこちを回って商売をしていました。その時です。
友達の商人にあることを聞きました。
「何でもギリシアの方に凄い財宝があるらしいな」
「財宝?」
「そうだ、財宝があるらしいんだ」
こう友達から聞きました。
「スパルタの辺りにな」
「スパルタにか」
「何か国が買えるだけの財宝らしい」
「そこまで凄いのか」
「どうだい?興味があるかい?」
友達は思わせぶりな笑顔で彼に尋ねました。
「その財宝に」
「そうだね。そこまで凄い財宝ならね」
商人はまんざらではない顔で答えました。
「是非ね。一度ね」
「手に入れるんだね」
「手に入れたいね。丁度いい具合に今度ギリシアに行くし」
「なら余計に好都合だね」
「うん、行くよ」
商人は今度は笑顔になっていました。
「それじゃあね」
「行くといいよ。ただ」
「ただ?」
「そこまで凄い財宝がまだ誰の手にも入っていないのかい」
商人が次に気にしたことはこのことでした。
「また随分とおかしな話だね」
「ああ、それだけれどね」
友達はどうしてその財宝が今まで誰の手にも入ってこなかったのかも言いました。
「実はその財宝にはね」
「その財宝には?」
「厄介な奴が取り憑いているんだ」
「厄介な奴がかい」
「その財宝は海の奥にあって」
その場所も話されます。財宝は海の奥にあるというのです。
「妖精が取り憑いているんだよ」
「それがその厄介な奴かい」
「うん、そうなんだ」
まさにその妖精がというのです。友達は話します。
「かなり性格の悪い奴でね。財宝を狙って来た人間に片っ端から謎々を仕掛けてそのうえで答えられなかった場合にはね」
「殺すのかい?」
「そこまではしないよ。ただ髪の毛を全部刈って陸に追い出してしまうんだ」
そうするというのです。
「そうしてしまうんだ」
「髪の毛をなんだ」
「しかも一生生えないそうなんだ」
つまり禿頭にしてしまうと。そういうのです。
「どうだい?髪の毛は惜しいかい?」
「髪の毛を大事に思わない人もいないだろ」
商人は暗い顔になって友達の言葉に返しました。
「それは」
「そうだよな。誰だってそうだよな」
「随分とえげつない妖精なんだな」
彼はあらためて言いました。
「そんなことをするなんて」
「殺されないだけましかも知れないけれどね」
「それでも髪の毛はないじゃないか」
商人はこのことに暗い顔のままです。
「全く。悪質な」
「そうだよな。けれどどうするんだい?」
友達は彼の顔を見
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