第二百二十三話 信貴山城攻めその三
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「そのことはご安心下さい」
「その言葉信じるぞ」
「そうされて頂くと何よりです」
「ではな、後は任せた」
「それでは」
「わしはこれで去る」
最後にこう言ってだった、老人の影は姿を消したが松永は最後まで背を向けたままだった、そして天守から日輪を見上げつつ呟いた。
「嫌いではないからのう」
こう言ってずっと日輪を見ていた、戦の指示はこれと言って出さなかった。
闇の者達があれこれと動いている間にだ、信長は。
大坂に着いた、そしてだった。
すぐにだ、大坂城にいる信行のところに行ってだ、彼に言った。
「すぐに信貴山まで行って来る、御主はここを守れ」
「何と、すぐにですか」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「そうしてな」
「信貴山城を攻められますか」
「そうする」
こう言うのだった。
「わかったな」
「九州から戻られてすぐにですか」
「危急のことじゃ、捨ておけぬ」
「しかし信貴山城は堅固といえど」
信行は兄が遠征から戻ったばかりなので彼の身体を気遣って述べた。
「一つだけの城です」
「周りに幾つか支城なり砦があってもな」
「兵も多くて二万」
「その程度じゃな」
「ですから九州から兵が戻り」
「そしてゆっくりと攻めればというのじゃな」
「そう思いますが、我等に任せて」
こう信長に言うのだった。
「そうして頂ければ」
「いや、わしが信貴山まで行きな」
「松永めとですか」
「話したいのじゃ」
「そして、ですか」
「降らせたい」
それで終わらせたいというのだ。
「だからじゃ」
「これからすぐにですか」
「信貴山に向かう」
また言った信長だった。
「そうしてくる」
「そうなのですか」
「そうじゃ、わかったか」
「どうしても行かれますか」
「兵はおるな」
「既に信貴山の方にそれがしと爺がそれぞれ二万進ませまして」
合わせて四万の兵がというのだ。
「囲んでいます」
「ふむ、そうか」
「はい、ここに三十万の兵が来れば」
それで、というのだ。
「間違いなく攻め落とせます」
「そうじゃな、しかしな」
「その前にですか」
「話をしたい」
是非にというのだ。
「あ奴とな」
「そうですか」
「駄目か」
「そうですかとは」
信行は兄に難しい顔で答えた。
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