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戦国異伝
第二百二十三話 信貴山城攻めその二

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「織田信長が出ましたな」
「これまでで最も厄介かも知れませぬ」
「あの男は何としても」
「ここで始末せねば」
「あの者はこれまでのどの者よりも手強い」 
 老人は確かな声で言った。
「間違いなくな」
「我等にも気付きますな」
「間も無く」
「では気付かれる前に」
「何としても」
「消す、必ずな」
周りに誓った言葉だった。
「織田信長もな」
「ではそこは」
「御前にお任せします」
「織田、徳川のことは」
「何としても」
「そうする。織田信長は何としても消す」
 こう言ってなのだった、兵のこともだ。老人は言った。
「ではまずはな」
「兵を起こしましょう」
「それで織田信長が討てればそれでよし」
「それではですな」
「今は」
 闇の者達は挙兵の用意に入った、そしてだった。
 闇の者達は一旦消えた、それから。
 老人は気配を闇から信貴山城の天守閣に移した、松永が造らせた見事な美しい天守閣にである。そこには。
 松永がいた、彼は丁渡天守の最上階にいたがその後ろに着てだった。
 その松永にだ、こう言った。
「こちらの用意はな」
「出来ていますか」
「そうじゃ」
 こう松永に答えたのだった。
「もう暫くすればじゃ」
「挙兵出来ますか」
「御主は織田家の兵を引きつけよ」
「この信貴山城に」
「天下は一つになった」
「そしてそこで、ですな」
「織田家は後ろを気にせずともよい」
 こう思っているというのだ。
「そこが狙い目じゃ」
「その背をですな」
「我等が衝く、都も朝廷も抑えてな」
「天下を大乱に戻しますか」
「そうする、織田信長もな」
「討たれますか」
「日輪は消す」
 信長を日輪として見た言葉だった、まさに。
「そうして我等の世にする」
「だからそれがしは」
「ここで粘れ」
「そして敵を引き寄せて」
「奴等の目を全て御主に向けるのじゃ」
 その注意をというのだ。
「そうして隙を作るのじゃ」
「さすれば」
 松永は老人の影に対して背を剥けたまま答えた。
「そうします」
「それではな」
「はい、ではそれでは」
「戦うのじゃ、鉄砲もあるな」
「充分に」
 松永はこのことは確かな声で答えた。
「あります、弓矢も兵糧も」
「なら充分にじゃな」
「戦えます」
 このことは保障するのだった。
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