巻ノ十二 都その五
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「そのことはな」
「必ずですな」
「戦の後は弔う」
「敵味方隔てなく」
「そうする」
「そうですか、そうした殿だからこそ」
清海はその幸村を見て話した。
「我等は共にいるのですな」
「拙者故にか」
「縁あってお仕えしましたがそのお心を知れば」
それでというのだ。
「余計にそうなるのですな」
「そうじゃな、今の話を聞いてわしもな」
猿飛も言う。
「殿のことを少し知った気がする、では」
「それではか、御主も」
「殿にお仕えしたいとさらに思った」
猿飛は清海に答えた。
「そうしたい」
「そうじゃな、ではな」
「うむ、これから何があるかわからぬが」
それでもというのだ。
「殿と共にいたいな」
「そうじゃな」
今度は清海が頷いた、そしてだった。
他の者達も頷いた、その猪のことから幸村をさらに知ることになってだ。そうした話もしながら都に進んだ。
その都が目に入って来た、すると。
遠目に見てもその賑わいはかなりでだ、幸村は唸った。
「これは」
「どう思われますか」
「これ程見事な賑わいの町は見たことがない」
こう霧隠にも答えた。
「岐阜以上ではないか」
「はい、もうこれ程までです」
「賑やかになっているのじゃな」
「先日本能寺と二条城で乱がありましたが」
それで信長と彼の嫡子である信忠が死んでいる、所謂本能寺の変だ。
「しかしです」
「それでもじゃな」
「賑わいはこのままで」
「それでか」
「以前の荒れ果てた姿はもうなく」
「平安や室町の様な、いや」
自分の言葉をだ、幸村は途中で止めて言い換えた。
「それ以上じゃな」
「それ程までの賑わいを手に入れています」
「そうじゃな」
「はい、あの様に」
「荒れた都は戦国そのものだったという」
「そうです、しかしです」
それがというのだ。
「前右府殿が上洛されて以降はです」
「あの様にか」
「復興されて今や」
「あそこまでになっておるのか」
「左様です」
「そうか、しかし遠目で見たところ」
どうかとだ、ここでこうも言った幸村だった。
「賑やかで人が多くなってじゃ」
「それで、ですか」
「狭くなっておるか」
「そういえば」
霧隠もその話を聞いてだ、頷いて言った。
「家も店も多くなり」
「そうじゃな」
「そうなってきていますな」
「前右府殿の政は相当よかったようじゃな」
幸村はその賑わいから言った。
「人が相当に多い、だからな」
「人が多くなり過ぎて」
「人も家も店も多くなり狭くなってきたわ」
「こうした場合他の町なら広がるのですが」
筧は町のことから話した。
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