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第一章
優しい悪魔
美代子はとても優しい女の子でした。
それでいつも皆が幸せになることを考えていました。そういう女の子です。
だから皆から好かれています。誰も美代子が大好きです。
「みよちゃんみたいな娘本当にいるんだね」
「そうよね。まるでマリア様みたい」
「とてもいい娘よね」
皆こう言って彼女を褒めます。けれど本人はそんな褒め言葉を聞いてもそれに慢心することなくです。皆の幸せを願って親切な行いを続けるのです。
そんな彼女ですがある日自分のお部屋でぬいぐるみをだっこして遊んでいたその前にです。シルクハットに燕尾服の小柄なおじさんが来ました。
そのおじさんはです。美代子の前に来てです。優しい声でこう言ってきました。
「君が美代子ちゃんだね」
「はい、そうです」
美代子はその手にうさぎのぬいぐるみを抱いたままにこりと笑って答えました。
「柏木美代子。小学校一年生です」
「そうだね。間違いないね」
おじさんは美代子の言葉を受けてにこりと笑ってみせました。
「それはね」
「私嘘つきません」
美代子ははっきりとした声でまた答えました。
「何があっても」
「そうだね。その正直で優しい美代子ちゃんの為にね」
「私の為に?」
「三つの願いごとを適えてあげるよ」
にこりと笑ってこう言うのでした。
「三つのね」
「御願いですか」
「そう。何でも好きなことを言ってみて」
また美代子に対して言ってきました。
「美代子ちゃんの好きなことをね」
「三つですか」
それを聞いてです。美代子は少し考える顔になりました。そうしてまずはこう言ったのです。
「あのお隣の山田さんですけれど」
「山田さんがどうしたのかな」
「はい、今奥さんが病気で大変なんです」
おじさんに対してこのことをお話するのでした。
「ですから奥さんの病気を治して下さい」
「自分のことはいいのかい?」
おじさんは美代子に対してこのことを尋ねました。
「美代子ちゃんのことはいいのかい?」
「奥さんを御願いします」
けれど美代子の言葉は変わりません。まずは奥さんをだというのです。
「山田さんのお家今とても大変ですから」
「わかったよ。それじゃあね」
おじさんは美代子の言葉に頷きました。そしてです。
右手に先が黒い月になっているステッキを出してきてです。それをさっと下から上に弧を描いて動かしました。そしてそれからまた美代子に尋ねてきました。
「二番目の御願いは何かな」
「二番目ですか」
「今度も好きなことを言ってみて」
言葉は同じでした。
「何でもね」
「わかりました」
おじさんの言葉をまた聞いてです。美代子は言いました。
「それじゃあ次
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