流転
座して微笑う串刺し公V
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城内の装飾や設備の自慢話を聞かされながら、私はヴラドに連れられ城の中央部に位置する中庭へとたどり着いた。
光もささぬ、松明のみの光源のなかで草花がそよそよと風に吹かれ踊っている。
その幻想的な場所に彼が立つと、その表情からは先程までのおどけていた少年の顔は消え、威厳ある城の主とも言えるものへと変わる。
「すまんのう。主には少し聞かねばならぬ事があった」
真剣な表情のヴラドに、私の姿勢も引き締まる。
どのような事でしょうか―――。
「主は、あの小娘の旅の目的を知っておるのか?」
旅の目的。
私は相棒となって尚、いまだに彼女の旅の目的を聞かされてはいなかった。
聞く機会が無かった訳ではない。
だが、私には聞く必要がなかった。
もはや、私は異端審問官ではない。
ベルモンドへの、彼女への贖罪へとその目的を変えていたのだから。
「ふむ、その様子ではなにも知らずにといったところか。奇妙な話よ…人である主が人ならざるものと目的もわからぬ旅路を共にするとは」
目的を知ることが重要なのでしょうか―――?
私の言葉に、ヴラドは腕を組み首をかしげる。
「まことに奇妙な奴じゃ。必要でなければ、このような質問はせぬのだがな。まぁ、良い」
それはどういう―――。
「次に聞きたいのは、小娘と共に行動をし、この儂に助けを乞いに来たということは…主は人を捨てたのか、という事じゃが」
ヴラドは私の質問を許さない、というかのように私の言葉を遮る。
私が捨てたのはあくまでも異端審問官という立場のみです―――。
「ふむ、ならば…例えの話し、小娘の目的の末、主ら人類に壊滅的な被害が出ると知った際はあの小娘を斬る覚悟はあるということかのう」
ヴラドのその質問に、私は答えを返す事は出来なかった。
つまり、それは異端審問官としてではなく、人として同胞の為に彼女を殺せるかとそういう事なのだ。
わからなかった。
彼女に対し、恋愛など特別な感情は持ち合わせていない。
私個人の贖罪の為に共に旅をしているだけのこの関係。
ならば、その時になれば迷いなく彼女を斬る事ができるのだろうか。
しかし、ヴラドの質問に対し答えられない自分がいる。
「この二択に迷うとは、正直驚いたぞ」
彼は一体何を知りたいというのか、私には理解できなかった。
「なれば、小娘の行動を是か非かどう思う?」
どう思うか…。
今のところは良くもなく悪くもなく―――。
必要の無い殺生をしていないだけ、彼女には正義はあるのではないかと―――。
「是か…ふむ。やはり、というべきか…目的を知らぬだけに是非の点においてズレがあるようだのう」
では、彼女の行動は悪だと―――
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