流転
座して微笑う串刺し公U
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指摘はさておき、ヴラドの見定めは大したものだった。
異端審問官は普段、証以外にそれを証明するものを持ち合わせていない。
私の立ち姿を見ただけで、それも一瞬で見抜くとは只者ではない。
「驚いておるな。まぁ、当然。なんといっても儂は…」
「どうせコイツの剣を見て言っただけでしょう」
ヴラドの言葉を遮り指摘するアーシェに彼はがっくりと肩を落とす。
「客人の前で恥をかかせてくれる。主はもう少し敬いの心を持ってはどうなのじゃ」
どうやら図星だったようだ。
このような者の所へ身を隠していて本当に大丈夫なのかと不安になる。
「まぁ良かろう。結論から言えばこの城に身を隠してもらうのはいっこうに構わぬ。この場所は同胞の隠れ家…来る同胞とその連れの者を拒む理由は無い」
「でしょうね」
だが、とヴラドは彼女の言葉を遮る。
「条件はある」
ここまできて、やっとヴラドはその重い腰を上げ私達へと近付く。
「追われている理由と追っている相手の事は話して貰おう。儂とて数百の同胞の命を預かる身なのでな…この城に降りかかる火の粉があるというならば、それを消し去る構えは用意せねばならんのじゃ」
全くもって正論だ。
いかに無能に見せてもさすがは一城の主というわけか。
「大方、後者は予想がつく。しかし、問題は前者じゃ…主、何をした?」
ヴラドの向けた眼差しは先ほどのものとは違う、鋭い眼差し。
私はその眼光に、背中がぞくりとしたのを感じた。
教会を離反しました―――。
ありのままに、そして慎重に言葉を選びながら私はここへと至った経緯を語る。
アーシェとの出会いと、教会を離反した理由を。
全てを聞いたヴラドは何かを考えているかのようだった。
そんな彼に痺れを切らしアーシェが口を開く。
「もう良いでしょう?私達は休みたいの。早く部屋と食事を用意してちょうだい」
「まぁ、まて」
ヴラドはそう言って、アルバートを呼びつけると彼の耳元で指示を出すと再びこちらを見る。
「部屋は用意しよう。勿論食事もだ…しかし」
ヴラドは私を指差して…。
「その男を少し貸して貰おう」
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