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ブイヤベース
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第一章

                       ブイヤベース
 少し昔のお話です。フランスのある漁師の村に一人のお婆さんがいました。
 お婆さんはとても親切で優しい人でした。それで村の子供達からもとても人気がありました。
「いいお婆さんだよね」
「そうだよね」
「僕お婆さん大好き」
「私も」
 皆口々にこう言います。本当にお婆さんが大好きでした。
 それである時です。子供達のうちの一人がこう言うのでした。
「プレゼントしない?」
「プレゼント?」
「お婆さんに?」
「そうだよ、お婆さんにね」
 プレゼントをしようというのです。
「それをしない?どうかな」
「そうだよね。いつもお世話になってるしね」
「可愛がってもらってるしね」
「今度は僕達がね」
「そうだよね」
 そして皆彼の提案に頷くのでした。
「それじゃあ皆で」
「何かプレゼントしよう」
「そうしよう」
 こうして皆でプレゼントをすることにしました。しかしです。
 皆の家は貧乏でした。プレゼントをするにしても皆何も持ってはいません。お婆さんにあげられそうなものは何もありませんでした。
 皆このことに気付いてです。困った顔で言い合いました。どうするかです。
「困ったな、何をあげよう」
「僕何も持ってないよ」
「私も」
 皆こう言って頭を抱えました。本当にどうしていいのかわかりませんでした。
「何かいい考えない?」
「そうよね、何かお婆さんにあげられるもの」
「何かあるかな」
「あるっていったら」
 ここでまた一人が言うのでした。困った顔で。
「お魚だけだよね」
「あと貝とか」
「海老とか。いつも食べてるしね」
「烏賊もね」
 漁師の家ですからお魚だけはあります。それは皆同じでした。
 けれど皆お魚やそうしたものしかありません。他は何もです」
「あとトマト?」
「それだけ?」
「食べ物だけだし」
 それでまた困った顔になりました。けれどです。
 そういうものをあげてもです。ただあげただけでは何にもなりません。それで皆お魚達をどうするかさらに考えるのでした。
「それでどうしよう」
「お魚や貝だけはあるけれど」
「それを集めてもね」
「どうしようかしら」
 そしてです。あれこれ考えていてです。ふとまた一人が言うのでした。
「もうさ、こうなったらさ」
「こうなったら?」
「どうするの?」
「皆一つにまとめて鍋で煮ようよ」
 そうしてはどうかというのです。
「お魚も貝も海老も烏賊もね。全部まとめて一つにして煮ようよ」
「全部一つにして?」
「それで煮るの」
「トマトも入れてね」
 これも忘れませんでした。トマトもです。
「それで煮てみない?一つにして」
「鍋にするんだ」
 こう
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