第3章 リーザス陥落
第41話 心の強さ
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ている。彼女を起こさないように足音を殺して 寝室の外へ居間の方へと向かった。
そこでは、天窓から月明かりが差込み 幻想的な空間になっていた。その月明かりの下に誰かがいた。
「……眠れないのか?」
「あ……いえ……」
その人は……、ユーリは、かなみが来た事に直ぐ判ったようだ。特に驚く様子もみせず、そう訊いていた。
「ユーリさんは、いつも、この時間に晩酌を?」
「いや……いつも、と言うわけではない。今日は オレも色々とあったからな」
ユーリはそう言うと、グラスを口に運ぶ。
からんっ……と、グラスの中の氷が当たる小さな音ですら、部屋に響く程の静寂な世界。そんな中でユーリと2人でいる状況。顔が赤くなりそう……だったけれど、やっぱりもう流石に駄目だとかなみは思ってしまったようだ。……国を取り戻すまでは、これ以上現を抜かす訳にはいかない。
「心配……か?」
「っ……」
かなみの表情から、ユーリはそう感じ取ったようだった。
「オレだって同じさ。リーザスには 親しい人だっている。冒険者をしていて、世話になった人達だっている。……だけど 信じよう。皆……無事だって。今はそう強くな」
ユーリが、そう言うとグラスを置いた。
ユーリ自身にも、リーザスには知り合いも多い。だから、自分も心配か? と言われれば 必ず首を縦に振るだろう。
「それに……気を張り詰めすぎるのも良くないぞ?」
「あっ……」
ユーリはゆっくりとかなみに近づき 俯いている彼女の頭に軽く手を置いた。
「適度に息抜きだって必要だ。ヒトミの話し相手になってくれた事にも感謝をしているよ。アイツは 友達が増えたって喜んでいたから」
「い、いえ…… 私の方が……でも……」
「『リーザスが、皆が大変な今……こんな事をしてても良いのか?』って考えてるな」
「ッ……」
かなみは まるで見透かすように言われたユーリの言葉に身体を震わせた。その反応を見るだけで十分だった。
「気持ちは判る。だが、さっき言ったとおりだ。気を張りすぎると 出来るものも出来なくなる。適度な休憩だと思えば良いさ。その代わりに その時が来たら……絶対に助ける。命を懸けて。そう強く誓うんだ」
ユーリは、自身の胸の部分を右拳でとんっ と叩きながら、かなみにそう伝えた。それを見て、かなみは、張り詰めていた表情を少し柔らかくする事が出来た。
「はい。……ユーリさん。ありがとうございます」
「いや、構わないさ。明日からもっと大変だぞ? ゆっくり出来るのは、今日が最後だってくらいに思ったほうが良い」
「はいっ」
かなみは、少しだけ気が楽になったようだ。
不思議だった。どうして、彼の言葉はこんなに心に響いてくるんだろうか? と
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