3部分:第三章
[8]前話
第三章
「住んでいる場所が離れただけなのに」
「そうだよね。それだけなのにね」
ヤゴ君もこう言って首を傾げます。
「それだけなのに。どうしてあんなに仲良くなったのかな」
「そうじゃのう」
山椒魚さんはそれを聞いているうちにあることに気付きました。
「そうじゃ。あれじゃ」
「あれって?」
「何ですか?」
「顔を見合わせることが減ったな」
このことを皆に対して話します。
「そうじゃろ?減ったじゃろ」
「それはね」
ヤゴ君が山椒魚さんの言葉に頷きました。
「住む場所変えてもらったし」
「だからじゃよ、顔を見合わせることが減ったからじゃよ」
「だから仲がよくなるって言われても」
「ねえ」
皆にはそれがどうしてか全くわからないのでした。
「どうしてなの?」
「そこんとこ意味不明よ」
「顔を見合わせないとかえっていいのじゃよ」
山椒魚さんがまた言うのでした。
「するとかえってな。いいのじゃよ」
「そういうものかね」
「いや、案外そうなのよ」
ここでタニシのお婆さんが蛙のおじさんに対して言いました。
「私だってうちの旦那と暫く会わないと寂しくなってね」
「そういえばわしもかみさんに暫く会わないと」
蛙のおじさんも自分のことに当てはめるとわかってきました。
「寂しくなるがいつも一緒じゃとな」
「喧嘩になるわね」
「ふむ、そういうことか」
「そうじゃないの?」
「その通りじゃよ」
山椒魚さんは穏やかな声で蛙のおじさんだけでなく皆に話しました。
「だからあの二匹は仲良くなれたのじゃよ」
「成程ねえ」
「だからなのね」
皆それを聞いて納得したのでした。
「顔を見合わせないおかげだったんだ」
「それでだったんだ」
「距離は大事ということじゃな」
山椒魚さんはここでまた言いました。
「それ次第で仲良くもなって仲が悪くもなる」
「そういうものだったんだ」
「距離次第で」
「うむ。しかしこれで川は平和になった」
「そうね。悪いものも入って来なくなったし」
鮎ちゃんも言います。
「いいことばかりね」
「場所と距離は大事じゃな」
山椒魚さんはあらためてこのことを皆に言います。
「全くのう」
皆このことをよく実感したのでした。何はともあれカニさんとザリガニさんは喧嘩をしなくなり皆の為にさらに頑張ってくれるようになり川はとてもよくなりました。このことは確かなことでした。
カニさんとザリガニさん 完
2009・4・15
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ