兄弟の章
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てあるが、食後に出すドルチェを君に任せようと思ってな。」
「はい…って、えぇッ!?」
ジョージは驚いてアッカルドを凝視した。何せ男爵に出されるわけで、こんな下っぱの出る幕ではないはずだ。
ジョージは自分の耳を疑った。
「ハハハッ!驚いてくれるとは思ったよ。この前作ってくれた焼き菓子が旨くてな、君に任せようと思ったんだ。葬儀出席者への返礼のために催される会食だから、あまり華美なものは出せんがな。」
「僕で宜しければ頑張らせて頂きますが、何種程作れば宜しいのでしょうか?」
ジョージの問いに、アッカルドは暫し考えてから答えを出した。
「まぁ、四から五種もあれば良いだろう。人数は四十人程だからな。」
ジョージの頭は計算を始めていた。
基本はスポンジ、パイ、タルトの三種が喜ばれる。大勢に出すとすれば、この三種を二つずつ作らねば間に合わない。
他に焼き菓子など、帰り際に渡せる菓子もストックしておいた方が無難と言うもの。
「今の時期手に入りそうな果物は…」
ジョージが質問しかけた時、待ってましたとばかりにアッカルドは口を開いた。
「お隣のヨハネス公国から、早摘みのベリーが入ってきてる。他にリチェッリからのオレンジとレモンも仕入れておいた。乾果実も木の実もジャムも補充してある。実はな、もう製菓場に用意してあるんだ。さっき着いたばかりだがな。」
「コック長…いくらなんでも…。」
ジョージは気になった。諸外国から運ばれる果物は、かなり高価な品なのである。それを何種も仕入れれば、当然仕入れ額も変わってくるのだ。
「なぁに、心配せんでいい。諸経費は前もって払われておるからな。実を言えばな、このフォールホルスト男爵はここのオーナーの友人なんだ。」
「はぁ…。友人…ですか?」
ジョージは首を傾げた。
片やレストランのオーナーで、片や領地を治める男爵。何が何だか分からない。
「ま、知らんのも無理ないの。ここのオーナーであるサンドランドはな、この店を建てる以前は子爵なんぞしとったんだ。」
「子爵ですって!?」
目から鱗である。コック長の話しを、ジョージは全く以て理解しかねた。
「ハハハッ!また驚いてくれたわい。」
アッカルドがあまりにも上機嫌に笑い続けていたため、ジョージは仕方なしにそれを止めた。
「あぁ、すまんすまん。オーナーはな、子爵位を弟に譲渡したんだ。そして、自分の知識と財産でこの店を建てたんだよ。その際、一緒にフォールホルスト男爵も設計に加わっていた。何でも幼い時分からの知り合いだそうだよ。」
ジョージには理解しがたかった。わざわざ爵位を捨ててまでやるなんて、とても正気の沙汰ではない。
「ジョージ。人にはな、諦めきれん夢ってものがあるもんさ。」
アッカルドは、彼の心を見透かしたかのようにそう言った
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