MR編
百四十話 冷たい雨
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を纏めるカタチで運用する予定なんだそうです。そう言う意味でも、ユウキ君の臨床データは本当に貴重なんですよ」
「ですよね……正直、ちょっと意外でした。こういう機械の事ですし、明日奈はともかく、俺達の面会は、多分断られても仕方ないだろうなって思ってたんで」
「あぁ、確かにそうですねぇ……」
何処か遠い所に意識を置いているような声で、倉橋は天井を見上げた。彼の声色が、やや暗い影を帯びる。
「正直な所、私も少し、浮かれていた部分はあるかもしれません。彼女が最初の小学校を転校してから、入院するまでは殆ど間がありませんでしたから、木綿季君がメディキュボイドに入ってから、彼女のお見舞いに来て下さったお友達は、貴方方が初めてなんですよ」
「…………」
「親戚の方も、AIDSの事を知ってからは殆ど彼女の家族とは接触を断っていたようで……打算的にしか、彼女と接しようとしません……」
と、此処まで言ってから、倉橋医師はハッとしたように口をつぐんだ。
「すみません、こういう事は言ってはいけないんですが……」
「あぁ、いや……んじゃ、何も聞かなかった事にしときますよ」
「申し訳ない」
苦笑して涼人に感謝の言葉を口にする倉橋医師に、涼人もニヤリと笑って応対する。言葉の端々から、倉橋の苦労が見えるようで、涼人はうっすらと同情した。
ユウキのような患者と長期に寄り添って生きるのは、恐らく想像以上の精神的負担が伴うだろう。そう言う意味で、涼人は倉橋医師に尊敬の念を覚えずには居られなかった。
「……私からも、一つ、お聞きしてもよろしいですか?」
「ん……どぞ」
「貴方方が聞きたい事……それは、藍子さんの事なのですか……?」
「あぁ……」
成程それか。結構敏いなこの人、と、涼人は若干驚きながら天井を見た。明るさを抑えたLEDランプが、けれどはっきりとした明るさで廊下を照らしている。
「……まだ、分からないんですよ」
「……?と、仰ると?」
続けて聞いた倉橋に、涼人は小さく苦笑した。自分でも、やや要領を得ない答えだとは分かって居たからだ。
「俺達も、明日奈と同じなんですよ。向こうの世界で出会った友人の事を追って、此処に来たんです。だから彼奴が……ランが、藍子さんだったのかは、まだ知らないんです」
────
「アスナは、先に行って?」
「え?」
ALOにダイブした直後、サチは唐突にアスナにそんな事を言った。
「最初は、二人で話した方が良いと思うから。私の方はすぐ終わるから」
「……うん」
躊躇いは、無かった。二人きりで話したい、そう言う欲求は、確かにアスナの中にあったからだ。其れを言いだしてくれたサチに、アスナは心から感謝していた。
「しばらくしたら追いかけるから、言いたい事、伝えたい事、伝えられ
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