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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十話 冷たい雨
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うなものが感じられて、思わず窺うように聞き返す。

「その……リョウは、ユウキに協力するの、反対なの?」
「……反対だっつったら、やめんのか?」
「それは……」
聞き返されて、自分の質問が無自覚にやや維持の悪い物になっていたと気が付く。そこで反対してしまったら、世間一般の道徳というやつに結び付ければ、涼人に薄情のレッテルを与えかねない。

「その、そういうつもりじゃなくて……」
「わぁってるよ。……反対っつーより、危惧してるだけだ」
「危惧……?ユウキの病気の事?」
今の状況で、涼人が危惧するとすれば、それか美幸のことだろうか?そう思って、明日奈は聞き返す。しかし涼人の口から出たのは、意外な人物だった。

「どっちかっつーと、お前とか、美幸だな」
「え、わ、わたし……?」
自分の顔を指さして言う明日奈に、涼人はあっけらかんとうなづいて真面目な顔をする。視線は正面を見ているためかもしれないが、その視線はどこか遠くを見ているようにも見えた。

「昔はそうとは思いもしなかったんだが……お前、ちょっと理想論に傾き過ぎるとこあるからな。良くも悪くもお姫さまっつーか……」
「……また、からかってる?」
「いや、欠点を上げてる」
「…………」
ひとまず黙り込んだ彼女の沈黙をどう受け取ったのか、彼は少し考えると、小さく息をついてブレーキを踏み込む。

「例えば……そうだな……わかってるかもしれんがあえて言っとくが……」
わずかな制動感とともに、車がスピードを落として停車する、と同時に……

「あの嬢ちゃんは、たぶん死ぬぞ」
「…………ッ!!」
言葉が、激甚の衝撃となって、明日奈の胸を抉った。

「リョウ、それは……!」
「お前も理解できてる筈だ。あの嬢ちゃんは末期の重病患者で、医者ですら半分匙を投げざるを得んような状態だ。もしお前が、頭のどっかで奇跡的に特効薬ができて嬢ちゃんのAIDSが治るとか期待してるんなら……その考えは捨てとけ。嬢ちゃんとはそのうえで付き合うんだな……」
「やめてっ!」
突然、明日奈が吠える。受け入れ切れていない事実を一度希望の持てる未来にうずめることで押しのけようとした明日奈にとって、涼人の言葉は強すぎた。
涼人の言葉を断ち切り、力なく笑ってすがるようにか細い言葉を紡ぐ。

「やめて……お願い、どんな時でも、希望はあるものでしょう?リョウだって、今まで色んな危険とか、危ない場面を切り返してきたし、乗り越えてきたんでしょう?……だから、そんな事……」
「……覚悟の話だ」
「…………ッ」
けれど、リョウの意見は変わらなかった。

「確かに、今まで俺もお前も色々あぶねー目にあったし、死んでたかもしれん状況も一度二度じゃなかった。それを乗り越えたから、今俺らはここにいる。けどな」
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