MR編
百四十話 冷たい雨
[13/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ていた。夕飯は六時だ。この前遅れたことを考えると、またしても母の機嫌を損ねるのはあまり好ましくない。が……
しかし……
「うわぁ、ちょっとまずいかも……」
これから帰るとなると、明日奈の実家がある世田谷まで、電車を使っても五十分は確実にかかってしまう。門限までに家にたどり着けるかは怪しいところだ。
「やれやれ、だ。ほれ行くぞ。送ってやる」
悩んでいると、涼人が頭を掻きながらそんなことを言い出した。確かに、車で行けば家までは三十分かそこらでつくだろう。隣区だし、それ以下かもしれない。だが……
「え、で、でもリョウ良いの?サチについてなくて……」
「あぁ?お前、そいつが家にいて自力で動けないほど重症に見えるか?」
「それは……」
まぁ、客観的に見ても美幸はすでにある程度気力を取り戻しているように見える。一人でもある程度は大丈夫だとは思うが……しかしついさっき過呼吸を起こしたばかりだ。美幸のこととなると何だかんだで気に掛ける涼人はここについていたいと思っていたし、美幸にしてもその方が安心するはずだ。
「私のことなら平気だよ?もう落ち着いたから……それより明日奈、門限が厳しいんだよね?」
「うん、うちは何て言うかちょっとね……」
あはは……と苦笑して、少しばかりごまかす。あまり家のしきたりについては話したくはない。
「なら、やっぱり帰ったほうがいいよ。お母さんも心配するだろうし……」
「うん……」
良いながら、明日奈は再び涼人を見る。支度を始めている青年は、明日奈の視線に気が付くと首を傾げた。
「で?どうすんだ。行くのか行かねーのか」
「じゃあ、お願いします」
「はいよ。料金はツケでいいぜ」
「お金はだせません!」
面白がるようにニヤリと笑った涼人に、明日奈は苦笑しながらも全力で突っ込んだ。
────
「それじゃ、行くけど……サチ、ちゃんと休んでね?」
「うん、ありがとう。そうします」
美幸の家の玄関先で、目を離すだけでまた症状がぶり返すと疑っているかのように何度も安静を支持してくる明日奈に、美幸は苦笑しながらうなづいた。外にいた涼人肩をすくめていう。
「お前はそいつの母親か。はよしろ。今切羽詰ってんのはどっちかっつーとお前だっつーの」
「わかってる!それじゃ、また明日」
「うん」
うなづいた美幸に軽く手を振って、明日奈と涼人をは家から出ていった。閉じた扉の前で一息ついて、美幸は胸に手を当てる。
「うん、大丈夫……」
言い聞かせるかのように、美幸はひとり言を呟くと、自室に入っていく。
美幸の部屋には、いくつかの小さな縁によって、写真がかけられていた。一番小さい頃は、涼人や詩乃とまだであったばかりのころの写真、小学生のころの写真、最近のものだと学校で女子メンバーがそろ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ