MR編
百四十話 冷たい雨
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AIDS(エイズ)
正式名称、《後天性免疫不全症候群(AcquiredImmune Deficiency Syndrome)》
これは、人類の歴史上でも特に知名度の高い感染症の一つである。
発見は1982年のアメリカのロサンゼルスであるとされているが、歴史上の感染が疑われる事例は1950年代までさかのぼり、人類が何時この病と闘い始めたのか、その正確な日付は未だにわかっていない。
確かな事は、その最初の事例が報告されてから、僅か10年ほどで感染者が全世界で100万人まで拡大したことと、現在世界でその感染者が5000万人を超えている……つまり、人類が未だ闘い続けている病であると言う事だ。
AIDSはHIV(ヒト免疫不全ウィルス)と呼ばれるウィルスが免疫系の細胞に感染する事で引き起こされる病で、その特徴はこのウィルス自体が病状を引き起こすのではなく、免疫系の細胞の機能不全を起こさせる事で、人間の免疫力(病気に対して抵抗する力)を直接下げて来る、と言う点である。
そして同時にもう一つ特徴がある。この病の名が世に知れ渡った最大の理由の一つである其れは、この病が現代の医療技術では根治困難な、所謂“不治の病”であると言う点だ。
現代に置いてHIVに対するウィルス研究は著しい発展を遂げている。その為AIDSも、少なくとも存在が確認された1980年代程恐ろしい病では無く、治療開始が早ければその寿命をまっとうする事も十分に可能なこのウィルスと病だが、それでも、ウィルスを完全に体内から取り除く事はほぼ不可能であるとされており、一度抗ウィルス薬を呑み始めれば其れを生涯続ける必要のある恐ろしい病であることに変わりは無い。
それでも、ユウキと家族は、その病と闘い続ける事を選んだ。初めの内は自殺と言う選択肢すら考えたそうだが、ユウキの母は敬虔なカトリックの信徒であり、自殺を禁じているその宗教形態への信仰心や、夫の支えもあって、闘病と言う選択肢を選んだのだそうだ。
生を受けた瞬間からその戦いの日々を強いられた少女は、多くの薬を呑む事、そしてその副作用に辛い思いをしながらも、必死に普通の生活をしていた。小学校へと通い、成績もトップクラスを維持し、友人も多くいたのだそうだ。彼女が四年生の時、伏せていたHIVキャリアーであると言う事実が、同学年の保護者に広まるまでは。
AIDS患者に対する差別意識の始まりは、この病が性感染症であることと、初期の頃、特に同性愛者や麻薬常習犯に感染者が多かったことに起因する社会的な偏見を発端として、現在までずっと続くHIV関連の問題の一つだ。
無論現代に置いてはそれらの差別は法的に禁止されているが、不治の病であると言う点等を主として、この病に対する正しい知識を持たないが故の過剰な恐怖感等を主な発端として、HIV
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