放浪剣士
真実の後に
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
「随分と早いのね。私はまだ寝ていたかったのだけれど?」
私がこうする事を知っていたのか。
しかし、何故私を引き留めるというのか。
あんなに鬱陶しく思っていたではないか。
私は、君の大事な人を殺めたではないか。
「全てを知った上で…あなたは許せない」
つかつかと、彼女は歩みより私に言う。
「でも、私には殺す権利がないから…死になさい」
自ら死ねということか?
だが、それを彼女が望むのならば…。
私が剣に手をかけると、彼女はそれを押さえた。
「勘違いしないで。私の為に働いて死になさい。…罪を償う気があるのなら、私の為に生きて、私の為に死になさい」
私に、異端審問官を辞めろというのか―――。
その言葉に、彼女は悪戯に笑う。
「あなたはもう、彼を手にかけたその日から異端審問官じゃなかったんでしょう?」
彼女は全て見抜いていた。
私以上に私の事を。
ベルモンドが彼女に惹かれた理由が分かった気がした。
私は剣から手をはなし、懐から異端審問官の証を取り出すと、細かく破り空へと散らす。
散らしたその紙切れは風に流れ去ってゆく。
私はこの時この瞬間に、ベルモンドと同じ反逆者となり…。
彼女の、アーシェの相棒となった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ