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White Clover
放浪剣士
魔女を愛した男X
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集落が近づくにつれ、嫌な予感は現実味を帯びてくる。

焼けた草木と肉の匂い。
風下に向かいそれは私の鼻を嫌というほど刺激する。

やがて、道端には異端審問官と異端者の骸が入り乱れ始め、悲惨な光景が広がった。

阿鼻叫喚。

まだ戦いは続いている。

私は馬を乗り捨て、集落へと走った。

あの時とは違う。
戦えるものもそうではないものも、皆等しく大地へとその身を伏せて逝く。

ベルモンドッ―――。

私は彼の名前を叫びながら集落を駆け回る。

襲い来る異端者を斬り捨て、骸の山を越えて。

やがて、たどり着いたのは集落の一番奥にある、簡易的に作られた教会だった。

息を切らせながら、ゆっくりとその扉を開く。

神の家は鮮血に染まっていた。

その一番奥には、鮮血にまみれ地獄の鬼とも言える姿をしたベルモンドの姿。

ベルモンド―――。

私と認識し、ベルモンドは剣を構えぬままゆらりゆらりと近付く。

その左腕には深い傷痕が刻まれていた。

「なぜここへ来た…」

息も絶え絶えに、私の体を杖とするようにこの身に手を置く。

魔女はどうなった―――。

私は心配だった。
無論、魔女の事ではなく、ベルモンドが支えを失い真の鬼と化していないかが。

「彼女は逃がした…」

それを聞き、私は良かったと胸を撫で下ろすとベルモンドへ逃げるように促す。

だが。

「それは出来ない…」

ベルモンドは私を突き放し、教会を出ようとする。

何故だ―――。

満身創痍のその身体。
それは外にいる異端審問官全員を相手にするには余りにも無謀。

「私は…もう誰も見捨てぬ。約束したのだ…」

約束?そんなもので命を散らすと言うのかっ―――。

だが、ベルモンドは言う。

約束だからこの身を散らすのだ、と。

「罪はもうぬぐいきれない。だから、この身を散らして、一人でも多くの罪なき者の命を救って贖罪としなければならないのだ」

馬鹿な―――。

そんなそんな贖罪があるものかと、私はベルモンドの肩を掴み力付くで引き寄せる。

「邪魔をするなッ」

ベルモンドの鋭い一閃。

私はかろうじてそれを剣で受け止めるが、満身創痍の男の一撃とは思えぬ重圧な一太刀にこの身がよろける。

「私は…もはや異端審問官ではない……」

止めたければ、そういってベルモンドは私に剣を向ける。

やめろ、私は敵ではない。

「情けは…無用だ」

私の声などもう届かないと、そう言われた気がした。

最強の男の…かつての師の一撃は重く、まともに受けることをゆるされない。

私はすべての神経をただ彼の一撃に集中させ、一閃一閃を刃に滑らせ受け流す。
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