放浪剣士
魔女を愛した男X
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左腕の深傷はやがて、彼の攻撃を止めさせる。
それを待つしかないのだ。
なぜ生きる道を選ばないっ―――。
逃がした魔女の為にも生き延びようとは思わないのか―――。
彼の隙を縫い、左手に持つ剣を弾き飛ばす。
だが、彼の目からは戦意は消えない。
「見捨てておめおめと逃げ延びた罪人を誰が受け入れるっ」
不覚だった。
たった一本彼の剣を弾き飛ばした油断か、私は彼の一撃に武器を折られ地面へとつき倒される。
「この身はこの地で幕を閉じる…一人でも多く道連れにして……」
剣を高々と振り上げるベルモンド。
死ぬのか。
そう直感した瞬間だった。
私の手の届くそこには、弾き飛ばした異端者殺しの剣。
「出来るならば…お前にベルモンドを継がせたかった」
降り下ろされる刃。
ベルモンドッ―――。
生存本能から、私はその剣を手に取り真っ直ぐと突きだしていた。
「ぬ…ぐ……」
その刃はベルモンドの腹部を貫き、彼の口から、腹部から、おびただしい血を地面へと落とす。
すまない―――。
私は剣を放し、よろりと立ち上がる。
対し、力なく一歩二歩と後退るベルモンド。
彼は、渾身の力で自らに突き刺さった剣を引き抜くと、それを私へと差し出した。
「とどめを刺してくれ…」
もはや、立っているのも不思議なその身体で、ベルモンドはしっかりと大地を踏みしめ私に懇願する。
「粛清も…お前にされるならば本望だ……」
私は、彼の差し出すその剣をそっと手に取る。
はじめからそのつもりか―――。
私の言葉に首を降ると、吐血しながらも言葉を絞り出す。
「幸運だった。お前が来てくれたのは…本当に」
がくんと膝をつくベルモンド。
もう、彼の限界は近かった。
「こんな罪人にも…神は救済を施してくれるものなのだな」
私は無言で剣を振り上げる。
これは、彼の忌の願い。
「彼女に会ったならば伝えてほしい…君のお陰で……愚かな人生にも救いがあった……と」
わかった―――。
私はその一言の後、剣を降り下ろした。
飛び散る鮮血。
そして、異端者殺しの剣で斬り裂かれたベルモンドはその激痛に苦しみ、息耐えた。
洗礼武器は、その犯した罪だけ斬られた者の苦しみを増す。
数えきれない異端者を殺し、数えきれない異端審問官を粛清してきた彼の痛みは想像を絶するものであっただろう。
私はそっと、見開かれたベルモンドの瞳を閉じた。
「終わったか」
それは、アルバの声だった。
アルバは笑みを浮かべながら、ベルモンドの死体を蹴ると、その傍らの異端者殺しの剣を奪う。
貴様―――。
「私も弟子だったの
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