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【銀桜】8.破壊狂篇
第5話「狂人は何事にも動じず破滅に微笑む」
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 人間は息絶える時に光の花を咲かす。
 それはとても美しく、同時に哀しい命火。
 しかしその命火を生きながら背負う者がいる。
 俺たちはその『光』に魅せられた《ムシ(蛾)》だ――そう盲目の人斬りは言っていた。
 だから高杉の周りには人が絶えないのだろう。
 けど『光』を背負う者は、一人だけじゃない。
 
 兄はいつも大勢の人々に囲まれている。
 毛嫌いされながらも、憎まれ口を叩かれながらも、かぶき町の人々はみな兄を慕っている。
 その周りにはいつも笑顔が溢れている。
 それはきっと兄の中の『光』が笑顔を惹きつけているからだろう。
 そんな光が見える時がある。
 いいや昔から見えていた。
 けど、その光は今の自分にとっては強すぎる。
 時折眩しすぎて、兄が見えなくなるほどだ。

 廃倉庫で双葉はとても奇妙な少年と出遭った。
 『破壊』に快楽を感じる少年・グラハムは、思うままに楽しんでいた。
 狂った笑みを絶えず剥き出しにして、破壊の限りを尽くしていた。
 どれだけ他人に迷惑がかかろうと。
 いくら馬鹿にされようと。
 楽しそうに楽しそうに楽しそうに。
 楽しそうに楽しそうに楽しそうに。
 だが、そんな彼に抱いた感情は、罵倒でも蔑みでも嫌悪でもない。
 双葉はグラハムを……妬んですらいた。
 壊れた彼に。『破壊』を楽しめる彼に。

 命の灯を自らの手で消す瞬間は、どうしよもない快感に満たされる。
 もっと味わいたい。もっと人を殺したくてたまらない。
 いつもいつも殺戮衝動に襲われる。
 だが、それと同じくらいにやってはいけないと咎める想いが自分を阻む。
 だから苦しい。けど、それがあるから普通を保っていられる。
 しかし、狂気に堕ちた男がいつも獣道に誘おうとしていた。
 耳元で囁かれる声を毎晩聞いて、内なる『獣』が激しく揺さぶられた。
 衝動のままに動いたら、また悲劇が生まれてしまう。
 なのに抗う力は男の声を聞くたびに消えてゆく。
 それで――逃げ出した。
 『破壊』しか求めない思想に疑問を抱いて離れたわけじゃない。
 狂気に耐えきれなくて、高杉から逃げ出したんだ。
 だから道を外れても、狂気に堕ち切れていないままだ。
 狂った衝動を当然だと楽しめない。けれど『快楽』だけは忘れられない。
 挙げ句、昔の幻想を今でも追い続けている愚者だ。
 ………。
 高杉のように狂い切れない。
 兄のように過去を『過去』と割り切れない。
 狭間の道をさ迷う中途半端な人間だ。
 そんな自分は……。

――どうなる。
――壊れかけた人間はどちらへ転ぶ。
――壊れかけても狂い切れていない人間はどうしたらいい?

 何度も何度も問いかける。
 彼女の声に答える少年の謳(う
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