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【銀桜】8.破壊狂篇
第5話「狂人は何事にも動じず破滅に微笑む」
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こいつァ駄目だ。女に渡すモンだからな」
「ほほう、女にプレゼントするとはアニキも中々優しいじゃないか。オレはますます尊敬する。……なるほど、プレゼントか。いいな!プレゼントは互いの絆を深める象徴であり、形として残された思い出は消えることなく心に在り続け、人生を楽しく悲しく盛り上げてくれるまさに最高の贈り物だ!」
「……ああ、たしかにな」
 ハイテンションに謳うグラハムの傍らで、誰に言うでもなく高杉は呟く。
 赤い紅い水に満たされた小瓶を見据え、微笑みながら。

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「思い出好きな奴にはうってつけの《プレゼント(贈り物)》だ」

* * *

――楽しい、楽しい話をしよう。

 廃倉庫で少年は二つの衝撃を受けた。
 一つは『破壊』を愉しむ最中に突如登場した銀髪の侍。
 面白い男だった。
 所々まるまった毛先の髪。腑抜けたような眼。そいつが持つのは古くさい軟弱そうな木の棒。
 なのに、二度も愛用のモンキーレンチを受け止めた。
 とっても気に入らない奴だが、嫌いじゃない。
 銀髪の男に不思議と妙な親近感が湧くのはなぜだろうか。
 出会うのがもう少し早かったら、あの男についていったかもしれない。

 だが少年の心を捕えたのは片目の包帯の男。




『破壊される地面。崩壊していく足場。朽ちる地上』
 世界は巨大なレンチだけでもろく壊されていく。
 呆気なさすぎる。だが、それがどうしようもない『快感』だった。
 というより、それでしか何も感じられない。
 少年にとって『破壊』が全てだった。
 
 だが、狂気的な笑顔は優美な足に蹴り飛ばされ――少年の世界は変わった。

 豊満な胸と大人の色気をあやなす美しさ。
 それに似合わない、女性にしては短い髪と威勢のある鋭い眼。
 二つの要素は全く噛み合ってないが、そのズレこそが彼女の魅力を最大限に惹きたてる。
 まさに女性らしい女性の強さに満ち溢れた《ひと(女性)》だ。
 もう痛みが消えた頬に手をそえて、少年は恍惚に微笑む。
 彼女は踊るような華麗な動きで闘っていた。
 優雅に飛ぶ姿は、まるでこの国の象徴である『桜』が舞う様そのもの。
 銀をなびかせて桜が舞う――《シルバーチェリー(銀桜)》。

――高杉のアニキ。
――銀髪の侍。
――《シルバーチェリー(銀桜)》
――おもしろい。ワクワクが止まらねェな

 少年はうたう。
 悦びと破壊にまみれた詩(うた)を楽しそうに。

――この国の人間はおもしろい。
――愉快だね。実に実に愉快になってきた。
――もっと愉快な話を紡ぎ出すために、オレがやらなきゃいけないコトと言えばやっぱり……

――壊すこと、だよな。

=終=



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