第5話「狂人は何事にも動じず破滅に微笑む」
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
た)はもう聞こえなかった。
* * *
昼なのか夜なのかわからない薄暗い部屋。
片目が前髪に隠れた少年――グラハムは巨大レンチと約束のモノを持ってゆらゆらと入った。
「頼まれてたモンだ」
グラハムはキセルを咥えた男に紅い玉を投げ渡す。
無言で受け取ったのは包帯で片目を隠した男だ。彼は「解体遊びして遅れたのか」と皮肉を言いながら、残された目でまじまじと紅い玉を見つめた。
「うずいた解体心を止められなかった。すまない。で、それは何なんだ?高杉のアニキ」
正直に詫びてグラハムは自分が持ってきた鮮血の玉について尋ねる。破壊ができればそれでいい彼は、自分が取り出したモノについてまだ何も知らなかったのである。
「ド派手な花火をブチ上げるための部品だ」
包帯の男――高杉が不気味な笑みをこぼす。
共鳴するようにグラハムも歪んだ笑みを浮かべて言う。
「アニキが笑うってコトは、オレも盛大に楽しめるコトなんだろうな。今オレの目の前に綺羅綺羅綺羅りと燃える光が見える。それを滅びの光と皆思うだろうきっと。いいや多分絶対だ。だがオレにはどうも希望の光に見えて仕方ない」
その言葉にクククと笑う声が返ってきて、グラハムも更に口元を歪ませた。
ふとグラハムは何か思い出したような表情になって話を付け足した。
「そうそうそうだ。それを取り出した場所でオレは面白い奴らと出逢った」
彼の愛用のモンキーレンチがパシリと鳴る。
「一人は銀髪の女、もう一人は銀髪の男」
「ほう」と高杉は咥えていたキセルを口から離して、グラハムに目を向ける。
「オレの目の前に突然現れた銀髪の兄妹は、逢ったばかりのオレを最高潮に楽しませてくれた。『破壊』でしか満たされないはずのオレの心を、あんなに楽しませてくれる奴らがいたとは驚いた。なぁ高杉のアニキ、この国には本当に面白い奴らがたくさんいるな」
「ああ。だがその銀髪の兄妹は、この国でも滅多にお目にかかれねェほどおもしれェ奴らだぜ」
高杉は知ったような口ぶりで、モンキーレンチをコツコツ額にぶつけて興奮するグラハムに告げた。
「やはりな!より楽しい『破壊』を求めて故郷を飛び出した甲斐があった。これからオレの身にどんな 面白い話が降りかかってくるか分からないが、分からないからこそ人生は楽しい!」
ゴツンと鈍い音と共に狂的な笑みが顔いっぱいに広がった。
工具で切れた皮膚から血が垂れる。荒い吐息が漏れてもその笑みは崩れない。まるで化け物みたいだったが、高杉は特に気にせずキセルを一服する。
「ところでアニキ、それ飲んでもいいか?オレの喉は今潤いを求めている」
呼吸が整った頃、グラハムの目に止まったのは高杉の足元に置かれた小瓶。その中身はまるで血と見間違えるような深紅の液体が入っていた。
「悪ィが
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ