第二百二十二話 耳川の戦いその十三
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「御主が謀反を起こせばな」
「大きかったと」
「そうじゃったが」
「どうもその時は忙しく」
松永は申し訳なさそうな顔をしてはみせた。
「どうにも」
「頃合がなかったか」
「そうでした」
「言うのう、まあよい」
老人はここまで聞いてだ、苦い声で言った。
「御主は謀反を起こした」
「はい」
「ならばわかるな」
「最後まで戦います」
「そうするな」
「魔界衆十二家の一つ松永家の主として」
「御主は戦うのじゃ」
こう松永に念を押すのだった。
「我等も兵を起こすからな」
「何時頃起こされますか」
「織田信長が御主の城を囲む」
信貴山城、その城をだ。
「それから十日後にじゃ」
「織田家の後ろにですか」
「兵を起こしてな」
そしてというのだ。
「攻める、そうする」
「わかり申した、そのことは」
松永は老人のその言葉に頷いて答えた。
「ではそれがしは」
「十日だけ粘れ」
「はい、そうします」
「御主があの城に篭れば如何な大軍といえどもな」
「十日はですな」
「守れるな」
こう松永に問うた。
「そうじゃな」
「おそらくは」
「ならよい、十日待つのじゃ」
「そして魔界衆の軍勢で」
「織田信長を叩くぞ、その後で織田信長を討てずとも」
「徳川家にですな」
「仕掛ける」
強く言った言葉だった。
「そして徳川家も乱し織田家もな」
「乱しますな」
「そうするわ」
「では」
「吉報を待っておる」
最後にこう言ってだ、そしてだった。
影は消えた、すると。
松永はだ、一人こう言った。
「やれやれ、もう魔界衆なぞどうでもいいのじゃが」
一人になるとこう言うのだった、そして。
松永は自分の家臣達だけを連れて彼等だけが知る道を通り信貴山城に向かうのだった。だが松永は消えたことはわかっていても。
天下の誰もが彼が何処にいるかわからなかった、それで。
天下を一つにしたばかりの織田の軍勢の中でもだ、都に戻る中で大騒ぎになっていた。
「何処に行ったのじゃ」
「あ奴一体」
「何処に行った」
「まさか謀反か」
「謀反を起こすつもりか」
多くの者が瞬時に思ったことだった、それでだ。
信長にもだ、こう言った。
「上様、ここはです」
「都に急いで戻り」
「そしてあ奴の城を攻めましょう」
「信貴山の城を」
「そうじゃな」
信長も頷いた。
「ではまずは安土の爺に早馬を送りじゃ」
「はい、そして」
「安土からですな」
「信貴山の城を囲み」
「そのうえで」
「要所も抑えさせる」
それも言うのだった。
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