3部分:第三章
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第三章
「おじさんよりずっと年上だよ」
「鬼なら百年でもまだ子供であろう」
「それはそうだけれどね」
「だからだ。男前というにはまだ早い」
またこう童子に言う重太郎でした。
「それで御主は鬼というがだ」
「ああ、角ね」
「鬼に必ずある角は何処だ」
「はい、これだよ」
重太郎の言葉に応えてです。童子はです。
頭のその黒い烏帽子を手に取ってみせます。すると公家の髷にしたその頭の天辺にです。
白い小さな角が一本あります。童子はその角を見せて言うのでした。
「これでわかってくれたかな」
「ふむ。確かに角じゃな」
「僕は鬼だよ。それでね」
「悪い鬼ではないというのか」
「そうそう。ただこの山で幸せに暮らしたいだけなんだよ」
「しかし御主が鬼だからだ」
「おじさんみたいに退治しに来る人がいるんだ」
童子はこう重太郎の顔を見て言います。
「そういうことだよね」
「左様。わしは御主のことがわかったがな」
「おじさんみたいにものわかりのいい人ばかりじゃないよね」
「その場合はどうする。わし以外の者が来たならばじゃ」
「ううん。僕も退治されたくないし」
「ではどうする。御主が鬼だということはわかる者はわかるぞ」
「人間で子供が山に一人いるなんてことはないしね」
このことは童子にもわかります。どうやら伊達に百年生きている訳ではないみたいです。
それで、です。腕を組んでその可愛らしい顔を顰めさせて言うのでした。
「じゃあやっぱり」
「うむ、やがてまた来るぞ」
「困ったなあ。退治されるつもりはないし」
「ではどうするのじゃ」
「僕が鬼じゃなかったらこんな苦労はしないのにね」
「しかし御主は鬼じゃ」
重太郎はこのどうしようもない現実を指摘します。そしてです。
立ち話も何だと思いです。童子にこう提案するのでした。
「まあ酒はある。飲みながら話をするか」
「お酒持って来たんだ」
「ここにな」
腰にある瓢箪を手に取ってそれを童子に見せながらの言葉です。
「あるぞ」
「まあ僕もお酒好きだし庵に置いてあるけれどね」
「庵に住んでいるのか」
「そうだよ。じゃあそこに入ってゆっくりとね」
「うむ、話そうぞ」
こうして二人で飲みながら話をはじめました。庵の中で。
庵は小さいですがとても整っていて清潔でした。そのお部屋の中で向かい合って胡坐をかいてです。二人は酒に山菜やあけびを食べながら話をするのでした。
そしてその中で、です。重太郎は童子に言うのでした。
「こうして飲んでみても御主が悪い鬼ではないことがわかる」
「そうそう、鬼っていってもいいのと悪いのがいるんだよ」
「しかし御主は鬼だ」
「鬼だからだね」
「人は退治しに来る。御主はこの山にいるとやがてじゃ」
「
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