焔の陰には “固定” する腕
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彼女の化物たる左腕と同等以上のそれに対し、無言で左手を添えて肘打ちをかまそうとして……目を見開き咄嗟に後ろへ飛び退いた。
尖った瓦礫の欠片が、柿色のオーラを纏って突っ込んできたのだから。
「フッ! やっ!!」
避け切れない分に噴出させた爆風を使って受け流し、器用に空気の流れを作り出して、水により脆くなっている地面擦れ擦れで停止する。
上へと目を向けてみれば、そこには穴のあいた空間に一回り小さい右腕を突っ込んでいる、あの時の “腕” のエレメリアンが、此方へと上半分のない顔を向けていた。
「〔ジョオオォォォオ……!〕」
「やっぱり……いた」
『逃げる気はねぇ見てぇダナ。自身があるノカ、怒りに身を任せたバカカ……』
少なくとも、以前よりは強くなっている事を、グラトニーは先の攻防で悟っていた。
今し方右腕は一回り小さいとそう描写したが、しかしそれは決して右腕が小さくなった訳ではない。
それどころか、右腕は以前と同等のサイズのモノが生えている……即ち、残っていた左腕が一回り肥大化しているのだ。
どこぞの漫画の如く過剰に線を書き入れられたような筋肉を持つ、より一層太くなった網目模様の掘られた柿色の腕。
強くなっているかもしれない……前回と同じ感覚では戦えない。
「〔ジョオオオオッ!!〕」
懐疑的な思考をひれ気て居た彼等に、それが正解だと言う事をを確信付けさせるかの様に、“腕” のエレメリアンは水面の上にさも当然かの如く『着地』し、大量の泥を掬うと思い切り投げつけてきた。
……単なる土くれや泥では無い。粒一つ一つが強化されて固定化された、一種の散弾である。
「セイラアアアッ!!」
それでも突風で叩き落とし爆風で瞬間的に回避しながら、グラトニーは柿色の散弾をキッチリやり過ごして見せた。
隙を見つけて接近し、大きな一撃を叩き込んでダメージを与えるべく、グラトニーは緩やかに誘う様に、泥沼の地を移動し始めた。
遠距離攻撃が主である “腕” のエレメリアンには、例え彼自身が強化されてようと素のままであろうと、やはり前回と同じ対処法が有効であろう。
だが向こうは知能も上がっているらしく、険しいモノを口もとに浮かべながらも、牽制の球を投げ続けて隙を窺っている。
……驚愕に値する出来事は、正にこの直後、泥を再び掬った後に起きた。
より一層柿色のオーラを濃く纏い、“腕” のエレメリアンが右腕を振りかぶったかと思うと―――
「《ブレーク=ショット》!」
「『へっ?』」
何と普通に喋った。それどころか技名まで叫んだのだ。
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