焔の陰には “固定” する腕
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己の思考が甘かった事を悟り、瀧馬の表情がゆがんだ。
『俺らからしてみリャ、人間だろうが動物だろうが食い物に変わりネェ。だから人間が一人もやられてねぇノハ、かなりラッキーだってこッタ』
「逆に言えば、これから喰われる可能性もある……って事だけどな」
『これから残り香を辿ル。そうそう不祥事は起こさせねェヨ』
言いながら《残り香》の解析を続けていたラースは、数秒程沈黙した後に見えぬ口を開く。
『相棒、念の為グラトニーになっとこウゼ。けっこう近くに居るかラヨ』
「……なんだ時間掛かるかと思ったが、好都合だな」
瀧馬としては安堵の意味を含めた言葉であったのだが、傍から聞いて居ればどう考えても好戦的に受け取ったようにしか聞こえず、ラースは両方の意味で取ったのか嬉しそうに笑い声を上げる。
『ヒヒッ、中々言うじゃあねェカ! それじゃあいくゼェ―――【コネクト】!』
「【コールズセンス】!」
変身ヒロインもののお約束をガン無視した如く、ほぼ一瞬の間に変身―――もとい細胞の丸ごと取っ替えを行い、瀧馬はグラトニーの姿となった。
先程まで嫌に真剣な表情だったのに、どことなくポヤ〜っとしたモノへ変わっているのは、グラトニー故のご愛敬と言った所だろうか。
まあ初見なら、その愛らしさを次元の彼方にブン投げるぐらい、異様な左腕と右足が付いているのだが……。
今でこそアクセントになって(しまって)いるものの、初めて見た者の心境は言うに及ばずだ。
「今度こそ、食べきる……宣言した」
『あイヨ、宣言されましター。そんじゃ行こウゼ、まずは南西……イヤ、南東に向かって走レ。奴サン、移動を始めやがッタ』
「……りょーかい」
右手の親指を人差し指の第二関節に当て、首を傾けると同時にポキリと音をならす。それを合図として様に、右足の噴射口から空気を吹きださせて、猛烈なスピードで走り始めた。
逃げているのかそれとも気まぐれか、ラースの誘導はグネグネと曲がる軌道を取らせており、岩を飛び越え、自然のアーチをくぐり、川の水面を蹴り、驚異的な身体能力による一種の障害物競争を繰り広げている。
流石に向こうも生物なので延々に続かず、その移動の幅も段々と短くなってきた。
『躊躇うな相棒! ダッシュしてヤレ!』
「ん!」
何度目かの高速蛇行モドキの後、ラースはグラトニーに一直線にスパートをかける様、それなりに大きな声で指令を出した。
―――刹那、空間が歪む。
『来タゼ!』
ラースの計画とほぼ同時に、柿色の腕が黒い模様の棚引く空間から突き出、グラトニーへ向けてストレートをお見舞いしてきた。
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