焔の陰には “固定” する腕
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ラースと話をする為に此処まで来たようだ。だがしかし、それなら人の居ない場所など態々選ばず、誰も居ない我が屋ですれば良いだけの話。
つまり人気の無いこんな所に来る事と、ラースが話すべき事柄は繋がりがあるのだろう。
『まずはあっち―――じゃねぇ斜め右方向10m辺りマデ、取りあえず進んでくれクレ』
「ああ」
そんな律儀に距離など分かるのかと、普通ならば不安に思うが瀧馬は大して表情も変えず、ゆっくりと一歩一歩進んで行く。
ちょうど10mとはいかずとも、10m弱ぐらいの地点まで来た頃、ラースが静かに声を出した。
『やっぱリダ……あん時の“腕”の奴の残り香がありやガル……生きてやがったノカ』
「! 腕の奴って……」
『アア、柿色の奴ダヨ、覚えてんダロ』
特徴をあらわす単語である “腕” 、そして言わずもがな色彩名である“柿色” 、幾らなんでも数日前に出会ったばかりであり、瀧馬も忘れている筈が無かった。
属性力を流しこみ、物体を強化し固定化する能力を持った、腕で体を支える上半身のみしか無い、単純感情種のエレメリアン。
楽々ではないものの、サーストと比べれば―――比べる対象が可笑しいのだが―――かなり容易い部類に入る敵だった。
シチュエーションが平凡であれば、まず覚えていなかっただろう。
もしかすると、ラースがここ数日違和感を覚えていたのは、“腕” のエレメリアンの事だったのかもしれない。
しかしその件の化物は、グラトニーの『風砲暴』により粉々となり、腕一本を残して消滅した筈。
ラース曰く趣味趣向が凝り固まった、アルティメギルの変態的エレメリアンとは違い、単純感情種のエレメリアンは属性玉が残らない。
なので、何も残さず消え去るのが普通なのだとか。
だからこそ瀧馬にラースの両者とも、“腕”エレメリアンがまさか生きているとは夢にも思わなかったのだが、だとすればどうやってあの嵐から逃げのびたのか。
「此処暫くのペットの行方不明事件は、奴の仕業だって事か」
『まさかとは思ったガナ。手口も多様化した昨今ダ、そう言う犯罪を働く奴だと俺も思っテタ』
「だが、此処に来てみて違うことが分かった、と」
『……っタク、嫌な予感が当たりやがっタヨ』
彼等もTVに映るニュースを、最初こそ怪しいと思ったが……考えてみれば瀧馬達は、自らが異形の存在であるエレメリアンだからこそ、そういた考えに至ってしまったのだと思った。
有り得ない可能性を捨てて言った為に、単なる誘拐事件だとアテを付けていた。
が、蓋を開けてみれば異形による仕業である。
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