放浪剣士
魔女を愛した男W
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あの集落の一件は、幸いにもアルバが自分を襲ったのがベルモンドと認識できていなかったことから、真相は私とベルモンドのみが知り得る事となった。
あの日から、私はアルバの不在を狙い幾度もベルモンドと対話し、あの時私が殺せなかったのは本当に正しかったのかと自問し続けた。
その対話の中で、ベルモンドには愛した異端者の女性がおり、その女性はとある集落で今もベルモンドを待ち続けている事を聞いた。
その女性が異端者狩りに疑問を感じさせた要因なのかと聞くと、彼はそれだけではないと否定した。
しかし、その女性が理由の中でもとりわけ大きな要因であったのは間違いないだろう。
女は男を狂わせる、とはよくいったものだ。
それから数日たったある日、私はアルバに呼び出された。
街の中でも、人気の少ない貧困街の安い酒場が私とアルバの密会場所だった。
周囲の人間に紛れ込むため、いつものようにいくつかの食べ物と酒を注文する。
もちろん、食べも飲みもしないのだが。
それらが揃うと、私はアルバにわざわざ呼び出した理由を尋ねる。
「これは、まだごく一部にしか知られていない極秘事項でな…」
ギラギラと輝くアルバの瞳。
私はこの目を知っている。
野心の目。
アルバが上へのしあがる機会を見つけたときは、必ずこの目をしているのだ。
私はよく奴の出世の手伝いをさせられていた。
アルバは私に出世欲のないことを良く知っているからだ。
また手伝えと―――?
だが、アルバの情報は不確かで骨折り損になる場合が多く、正直私はうんざりしていた。
そんな私の反応に気付いてか、アルバは早々に本題を切り出した。
「ベルモンドと奴の女を討つ」
私は耳を疑った。
何故それを知っているのだ。
ベルモンドの反逆も、彼の愛した女性の事も、私しか知り得ない筈。
「おまえは、礼を言うために呼んだ。時期ベルモンドになるための足掛かりをありがとう、とな」
聞かれていたのか。
私は動揺を隠しきれなかった。
「今、例の異端者の女がいる集落へと既に討伐隊が出発している」
にやにやと、気味悪い笑みを見せるアルバ。
「この事はベルモンドは知らない。今回はあの時のように逃がす暇もないぞ」
己の欲の為に師を売ったかアルバ―――。
「その師は下らん愛の為に我々を売った」
私はその瞬間、我を忘れ酒場を飛び出していた。
一秒でも早く。
私はベルモンドの元へと向かった。
私は愚かだった。
あんな不自然な状況で、アルバが探りをいれないはずが無かったのだ。
私は泳がされていた。
確信を、確かな証拠を掴むために。
ベルモンドの邸宅の扉を開け放ち、一心不乱に館をかけ上がる。
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