暁 〜小説投稿サイト〜
DIGIMONSTORY CYBERSLEUTH 〜我が身は誰かの為に〜
Chapter1「暮海探偵事務所へようこそ」
Story5:あの戦いを見ていた者達
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「だぁぁ!」
「ハッ!」
再び爪を振り上げ、テリアモンに迫る。しかしテリアモンはその攻撃を右の耳を器用に使い、自分の左側へ受け流した。
そしてまだ使っていない左の耳を、アグモンの顔目がけて振り抜いた。
見事に耳がアグモンの横っ面に命中、しかしアグモンは動じることなく、再び爪を振り抜いた。
少しは効くと思っていたテリアモンは、慌てて後ろへ飛ぶが、それでもアグモンの攻撃が一歩早く、テリアモンの腹部に掠り傷を与えた。
「このッ…」
「……“ベビー”…」
「ッ! “ブレイジング”…」
テリアモンはアグモンと距離を取る為、数歩後退。それを見たアグモンは、口に炎を溜めはじめる。それに合わせるように、テリアモンも熱気弾を構える。
「“フレイム”!!」
「“ファイア”!!」
ほぼ同時に放たれる二発の攻撃。それは二体の丁度真ん中あたりでぶつかり、炸裂する。大きな爆発音と共に、煙が二体を包み込む。
少しずつ煙が晴れていくと、先程と同じ場所に二体が立っていた。体中が少し煤だらけになっていたが。
「―――やるな…」
「…そっちこそ」
お互いの目を睨み合っていると、アグモンがニヤリと笑みを浮かべてそう言い、テリアモンも言葉を返す。
確かに、二体が言う通り互いの実力はほぼ拮抗していた。優位に立てる部分があるとすれば、アグモンが攻撃力と耐久力、テリアモンが素早さであろう。
「でも…なんでこんな事するの? もしかして、僕達の他にも誰か襲ったことがあるの?」
「言っただろう、俺達はただ戦いたいだけだ。更なる力を得るために」
「更なる、力…」
テリアモンが彼らの行動について質問すると、アグモンから笑みが消え、逆に怒りに近い表情に変わった。
アグモン達は力を欲していた。自分達が強い他の誰かと戦うことで、強くなれると信じて、誰彼かまわず襲っていたのだ。
しかし、テリアモンはそれを首を振って否定する。
「確かに、ボク達は戦うことで力を得られるかもしれない。だけど、それだけじゃきっと足りない、どこかで行き詰っちゃうと思うよ」
「何…?」
「ボクは今キミと互角に戦えているけど、以前のボクだったらこうはならなかったかもしれない」
テリアモンはそう言うと、別の場所で指示を出しているタクミをチラリと見て、アグモンに語り掛ける。
「ボクは今、自分の為じゃなく誰かの為に―――パートナーのタクミの為に戦っている。ボクのパートナーを、傷つけない為に…守る為に。だからボクは今、キミと互角に戦えているんだと思う」
「誰かの、ため…だと…? それが力になるとでもいうのか!?」
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