2部分:第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二章
「僕は鬼だよ。その通りだよ」
「ならばだ。おぬしはこの山にいて散々悪さをしているな」
「人を取って食べたりとか?」
「そうだ。違うのか」
「あのね、鬼だからっていってもね」
それでもだとです。鬼の声は重太郎に対して困った口調で答えます。
「誰もが人を食べるものじゃないよ」
「違うというのか」
「そうだよ。僕人なんて食べたことないよ」
「その言葉信じろというのか」
「やれやれ。疑い深い人だねえ」
重太郎の頑なな態度に呆れた様な調子でした。
「そんなに言うのならね」
「どうするというのだ?」
「僕そこに出るから」
鬼がです。遂に姿を現すというのです。
「そうしたらわかってくれるかな」
「出て来い。退治してやろう」
重太郎がその右手に持っている山伏の杖、今は鬼を退治する為に持っているその杖を握り締めます。それで鬼が出てきたら退治しようというのです。
けれどその重太郎にです。鬼の声はまた言ってきました。
「おじさんもかなり強いから僕の気配は感じるよね」
「気配か」
「僕の気配はそんなに悪いかな」
その気配を感じ取って欲しいというのです。
「そうしてくれるかな」
「言うな。ではだ」
「うん、どうかな」
「そうだな。ではな」
鬼の声に応えてです。その気配を探ってみます。姿は見えなくても気配は確かに感じます。その気配はといいますと。
「ふむ。特にな」
「悪くないでしょ」
「邪気がない」
そのことをはっきりと感じ取ったのでした。
「むしろ無邪気だな」
「人を取って食べるみたいに思える?」
「そんな気配は感じない」
微塵もだとです。こう答える重太郎でした。
「全くな」
「そうでしょ。だから僕悪い鬼じゃないから」
「では何故この山にいる」
「だって。鬼は山にいるものじゃない」
だからだというのです。
「それでいるんだよ」
「鬼は山にいるものか」
「そうでしょ。だからいるんだよ」
こう鬼の声はです重太郎に言います。そしてそれを受けてです。
重太郎は納得しました。それでなのです。
あらためてです。鬼の声に対して告げました。
「いいか」
「姿を見せろっていうんだね」
「そうだ。怪しい鬼でなければ姿を見せよ」
こう告げます。
「御主のその姿をだ」
「厳しいね」
「厳しいのも当然だ。信じよというのならだ」
「姿を見せてその口で語れっていうんだね」
「そうだ。それができるか」
「できるよ」
それはできるとです。声も答えます。
「じゃあ今からおじさんの御前に出るからね」
「うむ、そうせよ」
こうしてでした。声の主は重太郎の前に姿を現したのでした。
それは平安時代の公家の、若草色の服を着た子供でした。頭には黒い烏帽子があり
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ