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逆さの砂時計
静謐の泉
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で来ているかも知れない。貴女達の新しい役目は、仲間に泉の無事を伝え、届きそうな手を引き寄せることではないでしょうか」

 精霊族については、精霊が一番よく解っている。
 リース達がそうであったように、精霊族の多くは、遠くまで逃げきって、戻ってくるのを拒んだのだと思う。
 自分の言葉など、気休めにもならない筈だ。

 それでも。
 もしかしたら。
 彼女達が腕を伸ばせば、掴める手があるかも知れない。
 何もできないと悔やむくらいなら、無駄だと思っても動くほうが良い。
 それはきっと、無駄にはならない。

「リオは生きています。諦めるには、まだ早いでしょう?」

 自分達の足でならわずかな距離でも、普通の人間の足では数日分の距離。
 ましてここは大森林の奥だ。
 きっと、さっき見た以上に大きい倒木もあれば、人間の背丈ほどに育った草もそこら中で群生しているし、獣道があるかどうかすらも怪しい。
 泥沼なんかに落ちようものなら、それだけで一日や二日は軽く浪費する。
 本当にギリギリ。
 最悪、間に合わない。

 でも、たとえば空を翔べる精霊が迎えに行けば?
 少しくらいは時間と距離を短縮できるかも知れない。
 その分、リオや他の精霊が助かる可能性は増す。
 そんな風に考えられれば良いのだけど。

「……うん」

 リーフが目元を引き締めて、頷いた。

「ありがとう、クロスツェル。私、行くね」
「はい。人間には、くれぐれも気を付けて」

 空高く舞い上がったリーフの姿が、森の上を滑るように消えていく。

 そういえば、マクバレンさん達は精霊が翔ぶ光景を見ていないのでは?
 なんだかすごく大騒ぎしそうな気がするが……リーフ達なら大丈夫かな。

「貴女は行かないのですか? リース」

 自分の前に浮かんで一緒にリーフを見送った彼女が、にこっと笑う。

「私はここで仲間を待つわ。ひとりも居なくなったら、皆が戻ってきた時に気付けないから」
「……そうですね」

 そういう選択もあるだろう。
 ただ……アリアが目覚めている今、可能性は低いとしても、レゾネクトが突然現れることへの恐怖は、常につきまとう。
 アリアに繋がる手掛かりが無いなら、自分達だって、いつまでもここには居られない。
 ひとりきりで待つのは、相当心細い筈だ。

「私は大丈夫よ、クロス。あのふたりがすぐ戻ってきてくれると思うから。それより、ここまで連れてきてくれてありがとう。ダメね。お礼として何かできれば良いのに、私は何も持ってないの」

 心配が表情に出ていたのか、自分の顔にピタリとくっついて。
 頬ずりのつもりかな?
 ちょっとくすぐったい。

「貴女が無事なら良いのですよ、リース。でも……、そうですね
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