第八十四話
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
里香とゲームセンターから出て行き、喫茶店で注文が来て落ち着いて。ゲームセンターと違ってこの喫茶店は閑散としており、自分たちの他には客は閑散としか見えない。どちらも注文したコーヒーを一口飲むと、俺は里香へと向き直った。
「ありがとう、里香」
「……突然何よ?」
コーヒーカップを置きつつ里香に丁重にお礼を言うと、彼女は椅子にかけたコートの皺を取りながら、いきなり何だ――といった様子で聞き返してくる。
「今日呼んだのはさ、遊ぶ為なんかじゃないんだろ?」
「…………」
明日明後日、里香との約束をすっぽかす程大事なバイトがある、ということが分かっているのに、里香がただの遊び程度に誘うわけもなく。何か、直接顔を合わせて話したいほどの大事なことがあったからこそだ。そう考えて問いかけると、里香は少し躊躇うような表情をした後、諦めたように薄く笑った。
「……うん。いい彼女キャンペーンは終わり!」
明日奈は凄いわー――などと冗談めかして呟きながら、里香は机の上に置いてあったスマホを操作していくと、お目当ての画面でこちらに渡してきていた。そこには、フルダイブゲーム専門のサイトである《MMOトゥデイ》が映っており、今回紹介されているゲームは……
「GGO……」
ガンゲイル・オンライン――GGO。今、俺とキリトがバイトという名目で調査している、先日に予選が終わったフルダイブゲーム。もちろん予選の結果は忠実に明記されており、そこには無論『Eブロック準優勝者――Shoki』としっかり刻まれている。
ゲームには直接関係はないからか、《死銃》のことは載っていないのは幸いだったが……里香はこれを見て連絡してきたのだろう。ただのバイトではない、という虫の知らせに近い確信を得て。
「あたし、やっぱ明日奈みたいに人間出来てないからさ、とっちめてやろうと思ったんだけど……」
明日奈みたいに、というところは少し冗談のように。もしくは自嘲するかの如く。ただのバイトじゃないのを問い詰めてやろうとした、と。
「あんたが来た時、あんまりに酷い顔してたもんだから。死ぬんじゃないかってくらい」
里香が暗くそう呟く。反射的に自分の顔を触ってたり、店内の鏡で自分の顔を見てみたりするが、特に普段と変わらない。……もしくは里香と話しているうちに、普段の表情に戻ったのか。
「そんなに……違ってたのか?」
「……うん。一緒にいて笑って欲しかった。いつもみたいに冗談言い合って、さ」
俺の問いかけに対してコクリと頷きながら、里香はそこまで言って照れたように顔を伏せる。だから喫茶店で問い詰めるのを止めて、半ば無理やりにゲームセンターに連れて行った。そして俺のその表情から彼女は……自身の勘が間違っておらず、俺の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ