第八十四話
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ていては、静かに話もできやしない……シノンに小さく謝っておくと、ふん、という鼻息で返される。
「もしかしてネカマ慣れしてるの? アンタ」
「い、いやいや、まさか……はは」
シノンの冷たい追求からキリトは苦笑いで逃れながら、とりあえず俺たちは他のプレイヤーがいない一角へと落ち着いた。……悪目立ちしていた流れからそのまま来てしまったが、特にシノンがついてきた理由はないのだけれど。シノン本人もそう気づいたのか、表情が苦々しげなものとなっていく。
「……それじゃ。本戦で会ったら敵だから」
「あっ……待ってくれ、シノン!」
ツカツカとその場を離れようとするシノンをキリトが前に立って妨害すると、彼女の前に何かリストのようなものを見せた。それだけ聞くと何か危ない図のようだが――幸いにもキリトの姿も女性のようなので問題ないか――そのリストを自分も覗き見ると、現実でリズにも見せられた、今回の本戦に出場するプレイヤーのリスト。
「この中で前回の戦いに出てない、シノンが知らないプレイヤーの名前はないか?」
「…………」
俺はそこで、ようやくキリトの意図を悟る。前回優勝者のゼクシードを射殺したプレイヤーは、名前や姿がこの世界に広く知られていない。つまり、前回の大会には出場していない、無名のプレイヤーである可能性が高いということだ。シノンはその彼女にとっては意図が分からない質問に、不満げな表情をしながらも考える所作をする。
「そうね、目の前のムカつく剣士とその取り巻きを除けば――」
「待て。取り巻きって何だ。訂正を頼む」
「――踊り子のお付きを除けば、ね」
――取り巻きとかいう不名誉な称号に訂正を求めたが、訂正後もキリトからリーベに変わったのみと、どうやら自分は、徹頭徹尾取り巻きから離れられないらしい。下らないことで口を挟まれたことを気にすることはなく、シノンはキリトが持っていたリストに印を描いていく。《ペイルライダー》、《Sterben》、《銃士X》――と、意外と多数のプレイヤーの名前にサインが描かれていく中、シノンの動きがピクリと止まる。
「……あとはコイツも、ね」
シノンは一息つくと、嫌そうに最後のサインをEブロック優勝者――リーベへと描く。《死銃》のアバターとは似ても似つかないが、《黒星》を持った彼女も、前回の大会には出場していなかったらしい。
――この中に《死銃》がいる。これ以上の手がかりがない中、本戦へのカウントダウンは刻一刻と続いていく……
ベルの音が響く。何の変哲もない目覚まし時計の音だ。その部屋の主である少女は、ノロノロとした動きで目覚まし時計を止めると、うーん、と声を上げて体を伸ばす。
彼女が寝床から覚めると決まって見えるものは、今や伝説
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