第八十四話
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てPoHと戦っていたが……本隊がいた場所は、戦死者が出た酷い乱戦だったと聞いている。
……その内の二人を殺したのがキリトだった、というのは初耳だったが。
「……悪いな、いきなりこんな話して。さっきも安岐さんに同じ話して、困らせたばっかりなのに」
「……俺は」
苦笑して今の話を無かったことにする和人に、俺も同様にベッドに座りながら口を開いた。……和人が求めている答えを出すことは出来ないが。
「……何も覚えてない」
「え?」
言葉の通り。俺はあの浮遊城で、プレイヤーを殺したことを覚えていない。だが、確実に……この手に掛けたという感触だけは覚えている。思い出したくないと脳か心が拒否しているかのように、トラウマにすらならないほどに記憶にない。
「それでも……思い出したいないなんて考えたこともない。キリトみたいにそうやって覚えてて、苦しんだりなんかしたくない、って逃げてるんだ」
「俺も覚えてなんて……」
「俺より覚えてるさ」
わざと冗談めかした言い方をして肩をすくめるが、どうしようもないほどに心底思っていることでもある。キリトのように、あの浮遊城で殺したプレイヤーを背負っていくことは、今の俺には出来そうもない。故に殺したプレイヤーのことは思い出せないし、思い出したくもない。
「だから俺はGGOに行こうと思う。あの浮遊城に関することに、最後まで決着をつけるために。……お前もそうだろ?」
――ちょっと過程が違うけどな、という言葉の続きは飲み込んだまま、発することはなく。俺はあの浮遊城に関することから解放されるため、和人はデスゲームのことを思い出し、背負っていくため――過程が違うどころか、まるで方向性が逆だと自嘲してしまう。
「ああ!」
そんな俺の内心の嫉妬に近い感情を知ってか知らずか、和人は俺の言葉に力強く頷いた。そんな姿を少し羨ましいと思いつつも、激励の意味を込めてお互いの拳を交わすと、俺は少し気になっていたことを和人に聞いた。
「リーベは、和人には接触してないんだよな?」
「あの踊り子だろ? そう……だな。ブロックも違うし、話す機会もなかったし」
どうしてかは分からないが、あの踊り子はキリトには接触していなかった。武器の提供も嫌がらせも対戦も俺に対してのみ……爆弾と《死銃》の証たる黒星を持つ踊り子、リーベと決着をつける、という理由もあった。
「あいつは何者なんだ……」
そんな呟きをかき消すように病室の扉が開き、先程出ていった安岐さんが再び病室に入ってくる。俺たちの心肺などをチェックする機材の準備が整ったそうで、ようやくGGOにログインすることが可能となったらしい。《死銃》がどのような作用をもたらすか分からない以上、様々な備えは必要な
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