第八十四話
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たのは予想通りの二人組。上擦った声を出していた男、ことキリトに、この病院に勤務しているナースである安岐さん。キリトはこちらを心底驚いたように見ていたが、安岐さんはニコニコと笑いながら手を振っていた。
「今日もよろしくお願いします、安岐さん。……驚かされるようなことしてたのか、キリト」
「うん、真面目な挨拶大変結構!」
GGOにログインしている間に、現実世界の俺たちの身体のメディカルチェックをしてくれる安岐さんに挨拶しつつ――「なっ……!」とか「違っ……!」とか言い訳がましいキリトを無視しつつ、俺は自身が寝ることになるベッドに荷物を置く。
「和人少年は美人カウンセラーにカウンセリングを受けてたとこだけど、君もどう? 今ならタダだよ?」
「タダより高いものはないんで遠慮しときます」
受けるつもりはなかったので適当に断ると、安岐さんは残念そうに肩をすくめていた。……里香に会わずにここに来ていたら、もしかしたらカウンセリングを受けることになっていたかもしれないが、とにかく今回は遠慮しておく。安岐さんはSAO生還者の身体のリハビリを担当していたため、当然俺やキリトのリハビリ中の醜態もしっかり晒してしまっている訳で……これ以上、心の部分まで弱みを見せたくない、というのが本音だが。
「残念。それじゃ機材の使用許可取ってくるから、ちょっと待っててね」
そんな無意味な見栄を張っている俺の心中を見破っているかのように、安岐さんは笑顔で病室を出ていった。最後までヒラヒラ手を振っているのを横目に一息つきつつ、先にこの病室まで来ていたキリトへと視線を向ける。
「随分早いな。安岐さんと何話してたんだ?」
「まあ、ちょっと……な」
言いにくそうにキリトは――和人は顔を伏せる。あの灰マントはGGOの世界にてキリトの前にも現れたらしく、『お前は本物か?』という意味深な問いをして去っていったとのことで。……十中八九、あの浮遊城の関係者でしかありえない。
「翔希は……」
「ん?」
ベッドに座って顔を伏せていた和人が、意を決したようにこちらを振り向いた。
「……人を殺した時のこと、覚えてるか?」
「――――」
予想だにしていなかった――いや、心のどこかでは、聞かれることを覚悟していたかもしれない――和人からの質問。それに答えようとする暇もなく、和人の独白は続いていく。
「俺はラフコフの連中を二人殺した。……でも、その殺した二人の、名前も、顔も覚えちゃいないんだ……」
ラフィン・コフィン討伐戦。レベルの劣る攻略組に対して、罠や不意打ちで死ぬ気で立ち向かったレッドプレイヤーたちは、攻略組のメンバーによって多数の死者を出した。その際俺は横道へと弾き出されてしまい、本隊からはぐれ
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