第八十四話
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バイトが何か危険なことで、いてもたってもいられなくなった……ということらしい。
「……ごめんな」
まず口から出てきたのは謝罪の言葉だった。それに何の意味があるわけではないが、言わなくてはいけないこととして。顔を伏せたままの里香も、小さく「……ん」と応答し、俺はGGOのことを話し始める。もう隠し事など、出来ないから。
「キリトの都合もあるから、明日奈には言わないでくれると嬉しい」
そう前置きしてから、俺は里香に訥々と語っていく。菊岡さんから聞いた今回のバイトの話、仮想世界の銃弾で現実世界のプレイヤーを殺した《死銃》の話、アインクラッドのことを知っている灰マントの話……あの踊り子、リーベの話。
「……リーベ?」
それまで神妙に聞いていた里香だったが、その名前を聞いた時だけ、こちらに聞き返すような声を発した。自身のことを《SAO失敗者》だと語った彼女のことを。
「知ってるのか?」
「……ううん、どっかで聞いた名前だな、ってだけ……ごめん」
思わず身を乗りだして聞いてしまったが、里香もあの踊り子のことを知っている訳ではないらしく――当然と言えば当然だが――曖昧に首を振るだけでなく、こちらに謝らせてしまう。……咳払いを一つ、その後コーヒーを飲んで落ち着くと、里香には「驚かせてこっちこそすまない」と謝罪する。
「《死銃》だとか《SAO失敗者》だとか、何言ってるかも分からない。だけど、あの浮遊城にまだ囚われてる奴がいるなら、それは終わらせた俺たちの責任だ、ってな」
これはキリトと話し合って決めたことでもある。浮遊城に囚われた二年間、その後の須郷の計画を止めた俺たちは、いつまでもあのデスゲームがまとわりつく――というのはキリトの弁。……迷惑な話だ、というのが俺の心からの本音だった。
それでも、恐らくキリトの言う通りなのだろう。
「……うん」
全ての話を聞き終えた里香は、小さくそう呟いた。その表情から何を考えているかは読み取れないが、そんな彼女の表情を俺は一度だけ見たことがあった。ALO事件の際、里香が自らの力不足を吐露した際の表情だ。
「それに……」
そんな表情をした彼女に言うべき話ではない。そう分かってはいたが、口から勝手に言葉が吐き出されていた。《死銃》が語ったあの言葉――『it's show time』。あの殺人ギルドが言っていた台詞に、リーベがこちらに問いかけた『始めて人を殺した時のことでも思いだした?』という言葉。
「……あの浮遊城からは、逃げられないみたいだな」
力なく笑う。でも逃げられないなら……立ち向かうしかないじゃないか。そういう風に考えられるくらいには、俺も里香のように強くなっていたらしい。
「だから、今度こそ引導を渡してき
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