第1話 現実から仮想へ
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2022年。
俺はとあるゲームの為に、3日前から店先に並んでいる。
ショーウィンドウの先にはゲームのCMが流れている。
殆ど現実と変わらない景色、しかしその中にあるのは自然と、見たこともないモンスター、そしてプレイヤーと、その手には剣。巨大な鋼鉄の城。
そして、そのCMの真ん中に出てくる。青い文字。世界初のVRMMORPG《sword art online》通称SAO。βテストではない。きちんとした製品版が、発売間近、残り数分もない。
15才である俺は、学校や親に黙って約3ヶ月バイトをし、給料3ヶ月…(正確には2.5ヶ月)分の封筒を握りしめている。
俺がネットのonlineゲームに嵌ったのは、母が他界した後。裕福どころか貧しい我が家は、2年前母が癌を発症した時に治療費を払えなくなった。母の保険金が支払われ、だいぶ裕福になった我が家だが、祖父の家、弓道の師範をしている父の父母、つまり俺の祖父母の家に、2人で転がり込んだ。
俺の祖母は62才と言う妙齢ながら、中企業のCP会社の社長をしている。祖父は弓道の師範。祖父は父が弓道を継がなかったのをいい事に、俺は幼い頃から週末。友人達との遊びを返上し、後ろから厳つい目を向けられながら、泣く泣く練習していた。
俺が中学1年の時、母が入院し、父が祖父に土下座をして金を借りれないかと懇願していたのを見て、祖父の返答があまりにも辛辣だったのを盗み見た時、俺の中で何かが変わった。
その中に飛び込み祖父をこけおろし、初めて祖父は悲しそうな顔を見せた。
その後2人して家を追い出され、道場に立ち入るどころか、敷居をまたぐ事さえ、許されなかった。
初めて父の泣き顔を見た時、俺は祖父と言う人間。祖父と同じような人間達を、そしてそれは徐々に拡大し、大人達を、そして友人までも拒絶するようになった。
それからは、身分も素性も一切関係ない、友人とも言えない関係、親しいが助けるに値しない。そんな事を思いながら、ただ無意識に、無感情でネットゲームにはまり込んだ。銃を使ったゲーム。モンスターを狩るゲーム。レベルやジョブを決め、己の力で進んでいくMMORPG。あらゆるゲームをした。飛び道具や小型武器、祖父が生き甲斐にしていた弓。そんな狡い物を使って、PKやMPKをした。お前らの罪は俺が裁いてやる。そして、祖父へのあてつけで。そんな自己満足で。
朝露の中、ひとり思いに耽っていると、急激に列が進み出す。
気づけば、半分以下になった給料と、大きな箱とその小脇に、小さな箱を抱え、家に戻ってきた。
その間、何を考えるでもなく、いつも通りの景色、石段の上の古い日本家屋を眺めていた。
ズパンッ!
道場から矢が刺さる音が聞こえる。
その音に鼻をふんっ
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