城館(シャトー)の主
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本館は前庭とは違い、グールはいない。むしろ静か過ぎるくらいだ。するとニナは俺の肩の上から。
「ねえねえ。」
「…なんだ。」
「この扉の先にいるね。ヴァンパイア。」
「…ああ。」
本館の奥の部屋の扉。恐らく舞踏会などで使うパーティー会場だろうか?大きな扉があった。
ニナは少しだけ、小さなため息をついて。
「…はあ、油断しないでね。」
「油断?」
俺は『夢幻剣』を取り出し。口元だけの笑みを作る。
「今、俺にあるのは目の前の敵から奴の情報を手に入れる事しか考えられねえよ??」
俺はそう言ってダッシュで大きな扉に迫りその勢いのまま扉を右斜めから切りはらった。
そしてその扉を吹き飛ばす。
「…!」
俺は部屋に入ると言葉を失った。むしろ言葉など忘れる光景があった。
ニナは苦々しそうにその光景を見て。
「…本当に…クソだね。」
そこにあったのは玉座の後ろで十字架に手足を拘束され、巨大な試験管2つの中で苦しげに眠る一糸纏わないゼツとリナだった。
そしてその前に後ろ向きでその姿を見上げる立つ少年がいた。その少年はそのままの姿勢で。
「まったく…私の城館の前庭のグール達が全滅させられるとは…。本当に困ったねずみだ…。」
「…お前が『炎帝』か。」
そう俺が尋ねるとゆっくりと俺の方を向いてきた。その男は18くらいの女の子の様な美少年で、眼はヴァンパイアの眼…紅い目だった。そして髪は腰までの長さの赤髪だった。
「そう。私がこの城館の主人であり炎帝。『色欲のアスモディウス』です。以後お見知りおきを。」
「『色欲』、『アスモディウス』…。七つの大罪か。」
俺がそう言って呟くとアスモディウスは紳士的な笑みを浮かべて肯定する。
「左様でございます。我が主の世界では七つの大罪は『夢』を作るのに必要不可欠な存在らしいのでね。」
「…お前の主とは…。奴…か?」
俺がその名前を出すとアスモディウスが驚いた顔をして俺に笑いかける。
「ほう…。我が主の存在を知っているとは。この世界では私以外の主の配下しか知らないと思っていたのですが…。」
「…!奴の事を知っているのか??」
俺はそう言って食いかかる様にアスモディウスに問い詰めるとアスモディウスは少し笑うと。
「ええ、知っていますよ。現に『魅惑の魔眼』という物をくれたのは我が主です。
…なぜか今、ヴァンパイアなら全て持っていると思われているらしいですがね。」
「…。」
確かに…奴なら出来る。そんな突飛な、ありえない奇跡をまるで息をするかの様に起こす。
そんな事を考えている間にもアスモディウスの演説は続く。
「あの方は素晴らしい。『魅惑の魔眼』のおかげで、この沢山の魔力を
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