第3章 リーザス陥落
第36話 真夜中の魔の手
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LP0002 3月
〜リーザス城 軍隊訓練場〜
リーザスに備え付けてある軍人の訓練場で、只管汗を流す軍人がそこにはいた。
一体何時から、訓練をしているのだろうか?
彼の足元にはおびただしいまでの汗が流れ落ちており、地面を湿らせている程だった。その汗の量が、彼の訓練時間の長さを、正確に物語っていた。
「いやはや……いつもに増して精が出るな? リック」
「バレス殿……お疲れ様です」
「お主の方が疲れていると思うが、手は止めなくて良いぞ」
《リック・アディスン》と《バレス・プロヴァンス》
2人はリーザスの将軍であり、リックは赤軍の将、バレスは総大将であり、黒の軍の将も兼ねている。
リックは、知る人ぞ知る赤い死神と言う異名で別国では恐れられて、リーザス最強の将軍と呼ばれている戦士である。バレスは最近のリックの訓練の意気込みに少しばかり違和感を持っていたのだ。
確かに、赤軍の将軍として、訓練をするのはいつも通りなのだが、殆ど毎日鬼気迫る勢いで訓練をし、模擬戦もしている。付き合った相手にも死神の姿が見えてしまいかねず、トラウマを抱えてしまう程だった。妙に力が入っている。入りすぎている事を悟ったのだ。
「近頃の主の意気込みは鬼気迫るモノを感じるからのぉ……それが少々気になってな」
「そうですか……、私は知らず内に力が入っているようですね」
「ふふ、誰かに恋でもしたのか?」
バレスはニヤリと笑いながらそう聞いていた。
己が意図せず内に力が自然と沸いて来るのだから、そういった事情もありえるのだろうと、思ったようだ。だが、リックに限って、と本気にはしてなかったのだが……返ってきた返答には驚きを隠せなかった。
「恋……ですか、確かに そうかもしれません」
「な、なんと……真であったか」
バレスは、驚き目を見開いていた。
元々の彼が好いている人物は、目星がついていた。そこまで単純ではないのだが、時折謁見する際に顔を合わすときの仕草を見れば良く判る。伊達に歳を取っているわけではないと言う事だ。
だが、それはもう随分昔からの事だった。
リックが、異常なまでに意気込むのはここ最近の出来事だから。
「私は、あの男の、彼の剣技が忘れられません。目に焼き付いています。……目を奪われてしまったのです」
「……なるほど、そう言う事か」
リックの言葉を聞いてバレスは理解した。
彼が言っている言葉、バレスにも勿論知っている。以前のコロシアムの試合は 全軍にも知れ渡っているのだ。長くチャンピオンとして、君臨し続けたユランを破った冒険者のランス。
「あのユランを破った男だからな。お主は試合の解説もしていた。目に止まるのにも無理は無いか」
「はい。確かに
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