第3章 リーザス陥落
第36話 真夜中の魔の手
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た欲求があの死神に芽生えたようで」
「ふふ……お前らしい」
トーマは、バレスの事を思う。
同年代で、敵でこそはあるが、互いに主の為に忠を尽くしてきた者同士だった。こんな形で決着をつけてしまうとは……と強く思っていたが、それ以上に。
「(パットン皇子はいずれ、世界の頂点に立つ人物。今は歪んでいても必ず……今回の1件で)」
皇子は、国家内部の策略によって、環境の変化によって陥れられた人だった。全てを取り戻す為に、今回の一件に全てをかけたのだ。たとえ、それが茨の道であったとしても……、皇子が歪んでいるとわかっていても……、信じて自身の主に忠を尽くす。それが軍人だ。
「(ハンティ……お前なら何と言うかな……)」
トーマはそう思いながらも脚を共に進めた。リーザス女王がいる場所へと。
「う……ぁぅ……」
メナドは、怪我に簡易手当てを施すと、リック将軍達が戦っている場所を目指して駆け出していたが、彼女も他のメンバーと同様に動く事が出来なくなっていた。頭の中に響く奇妙な音のせいで、身体の自由が利かず、まるで自分が自分でなくなっていくような感覚。
「(か、かな……み………ぼく…………)」
目が掠れてきたその時に、必至に彼女は手を伸ばした。いつも、いつも訓練に付き合ってくれた親友の事を想って。それでも……役に立てなかった事を嘆き。
そして伸ばしたその手は何も掴む事が出来ずにその場に崩れ落ち、意識も一緒に手放した。
〜リーザス城 最上階 〜
ヘルマンの兵が攻めてきた事は既にリア女王、マリスには届いていた。すぐさま、彼女達は移動を開始した。城外へ脱出出来ればそれが最善の道だったが、あまりの数の進撃にそれを使う間もなく、最上階の部屋しか無かったのだ。その部屋にかなみが飛び込んでくる。それを確認したマリスはかなみを見てゆっくりと、重い口を開いた。
「かなみ、下の様子は……」
「……地獄としかいえません。ヘルマン軍がここに来るのも時間の問題です」
「そう……」
マリスは表情を落とした。
如何に知将でもある彼女でも突然の大規模の侵入、進撃には対処仕切れる筈も無いのだ。
「大丈夫よ。今は確かに白の軍も不在してて戦況は悪い。でも リックやレイラ達親衛隊の皆がいる。彼女達がいれば朝までには持ちこたえてくれる筈。朝になれば国境警備隊も駆けつけてくれるし、白の軍だって遠征から戻ってくる筈よ」
リアは気丈に振舞いながらそう答える。いや、不安を打ち消したかったと言うのが本音だろう。だが、かなみは静かに首を振った。
「リア様……、親衛隊はもう壊滅してしまいました。……リック将軍も、レイラさんも……(メナド……ッ)」
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