第3章 リーザス陥落
第36話 真夜中の魔の手
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れながら、同じ様な思いを浮かべていた。最愛の存在であるリアを守る事が出来ない状況に、歯痒さを覚える。……魔人と手を組んだヘルマン側にも憎しみ以上の憎悪を覚える。
「(……ユーリ、様)」
そんな中で、彼女の頭の中に、脳裏に浮かんだのは リアとは違い、かなみと同じ人物だった。いつもリアと一緒だったマリス。リアの好きなものは自身の好きなもの。そうとまで思っていたのに、この時は違ったのだ。
そう、全てはあの時。
リアは、ランスに叱られて、立ち直る事が出来た。……壊れかけてしまっていた心に、正しい心が生まれてきたのだ。
マリスにとっての切欠は、頬に叩かれた衝撃だった。……あの感触は、まだ頬に残っている。
「……最後の最後まで、諦めません」
救えるのに、助けられるのに、助けないのは罪、何もしないまま受け入れる事も同じ罪だろう。
だからこそ、マリスは手に力を込めていた。
かなみは、城の窓から外へと飛び……外周部を走り続けた。
彼女は耳が良い。だから、リアたちがいる場所が慌しくなったのが判った。もう、捕まってしまったと言う事を理解した。
「リア様……マリス様……」
聞きたくなかった、耳を塞ぎたかった。……でも今の自分に出来るのは走り続ける事だけだった。
助けを呼ぶために、皆を、助ける為に。
「……ユーリさん。ユーリさん」
彼女のウエイトを大きく締めている恩人の名前を何度も口にした。その優しい顔を。……愛しささえ沸き起こってくるその姿を、思い浮かべながら。
「私達を……どうか助けて……」
その想いと共に走り続けた。
彼女は無事にリーザスから脱出を果せた。
だが、それと同時に今日この日、リーザスは陥落したのだった。
同日・同刻
〜自由都市・レッドの町 宿屋〜
「ふぅ……」
「むにゃ……zzz」
レッドの町へと足を運んでいたユーリ。
この町には仕事ではなく、ちょっとした用事があった為アイスの町を離れてここへ着ていたのだ。
隣ではヒトミが規則正しい寝息を立てながら眠っている。彼女に着せてあげた服と帽子のおかげも有り、変な目で見られたり、攻撃をされたりはしないから良かったと言うのもある。彼女は、危険な仕事以外は、連れて行ってあげるという事に決めていた。
色んな世界を見せてあげたいからと言うのもあるのだ。
「さて、つかさ との用事も終わったし。明日にはアイスの町に帰れるな」
そう呟くと、ユーリは剣の手入れを行っていた。武器の手入れはなるべく怠らないようにしているのだ。以前、リーザスのコロシアムで剣が折れてからこうしている。
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