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blood∴or∵knight
未確認な追憶
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事、慣れない事、恋愛を…………人間だった頃の私は、どんな人間だったかな?
 好き嫌いの激しい女の子?
 根を曲げない真面目な女の子?
 本が好きな物静かな女の子?
 さぁ、忘れた。
 友達の名前も、家族の名前も、全部。
 覚えてるは八尋だけ。私を守ろうと努力する八尋 十咲だけ。
 何時かの私は私を救ってくれない八尋を憎んだ。
 でも、違うんだ。彼は私を助けようと繰返すだけだ。
 悪いのは私だ、永遠を八尋に押し付けるから。八尋は私の決められた永遠の人生を守護する騎士、私が死ねば最初から私を救おうと殺される騎士。死んでも、私を助けようと殺される私の騎士。
 私だけの騎士……私だけの…………。


「…………次は、必ず助ける。
 だから、待ってて…………」

 少女の運命は変わった。
 微妙な変化は結末を変えるキッカケを生んだのだ。
 最初の変化は八尋の殺され方だった。
 私を助けようと殺される筈の八尋は私を逃がそうと身代わりとなった。
 無論、運命は変わらず。私は八尋が殺された後、殺された。
 多少の変化を私は希望と信じ、次の私を演じた。変わらない運命は若干のズレを生じさせ私の結末は変わり徐々に、徐々に、八尋の生存時間も伸びた。
 1秒から2秒……1分から2分……10分から20分……30分から40分……。
 私を助けようと殺される八尋は生きる事を諦めず、死を否定する様な眼で、私を見るのだ。

 そして…………時間は動き始める。

「助けるよ、今度は助けられる。
 持っててね……今度は……助ける…………」

 私の時間は緩やかな速度を保ち、動き続ける。
 一定以上の時間は生きられず。殺される結末を変えようと努力するも無駄と終わった人生を八尋は変えた。
 自殺を図っても殺される私は結局元通り。諦めても死ねない私を助けようと『無駄』な努力を重ねた八尋の事を私は、好きになっていた。
 もし、次の私を助けられたら聞くんだ。
 なんで……私を助けたの?
 その返答は予想しつつ少女は安らかな眠りに付いた。
 覚めれば元通りな地獄の世界に。




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