未確認な追憶
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八尋は階段を登りきった直後。
何も知らない無垢な私を庇って『殺される』
人間味を失ったな私は…………もぉ、救ける気力さえ、残ってないよ。
限られた回数で、私は何度も、祈った。彼が救われる事を私が救われる事を彼が私を救けてくれる事を私が八尋を救けるられる事を。
そして……私と一緒に死んでくれる事を。
一人で死ぬのは嫌だ。私を庇って死なれるのは嫌だ。
その思いは願いは叶った。現に、私は存在を書き移せるから。
でも、それでも……結末を変えたい。
以前と変わらない結末と解っても、私は進んだ。
死ねないなら護るんだ。死ねないから護るんだ。
なら、する事は解るよね……私。
ひ弱な私は力を欲した。
死ぬと解っても覆そうと努力する私を私は知っている。
でも、力の差は圧倒的。無駄な努力と罵られるだろう。
そんな私を変えたのは『八尋』だ。
名前も知らない初対面の私を助けようと死んだ少年は誇らしかった。
勝手な自己紹介や過度のお人好しの彼は何度も、何度も、私を救おうと身を捧げた。
どの道、八尋と私は殺される。八尋の死は無駄だった。でも、無駄でも私を助けようと死んだ事実は変わらない。
だから、責めて、今度は八尋を助けると誓った。
私を助けようとする八尋を止める。私は助からない。でも、八尋は助かる。
無限ループを終わらせる方法は簡単だ。でも、それを実行できる勇気を私は―――――――
臆病な私は『死』恐れ、目を背けた。
本当は死んでるんだよ? 何故、死ねないの?
何度、自分に問い掛けても返答は決まっていた。
「生きたい……私、死にたくないよ……」
身体は震え、恐怖する。
八尋は私の為に死んだ。
なら、私も八尋の為に死ぬんだ。
そう思っても、心は生きたいと叫んでいる。
八尋は凄いよ。こんな私の為に何度も、死ぬんだから。
私を貫いた刃から血が垂れる。
ポタポタと真っ赤な液体は八尋の骸を覆って、全身を緋に塗り替えた。
今回も、駄目だったね。
無理矢理笑顔を作って運命を嘲笑った。
なんて、理不尽な人生なんだろ。痛覚は慣れない、心臓は貫かれ内蔵の一部は体から剃り落ちる。
片眼は潰れ、半身の感覚は消える。繰返される連鎖でも、慣れないよ。
叫びたい……痛いって…………叫びたいよ。
繰返される度に私の人間性は薄れ、人間だった頃を思い出すと何故、私は笑ってるのか?
何故、私は泣いてるのか? 何故、私は怒ってるのか? 何故、彼を好きになったのか?
それさえ曖昧だ。多分、数万回前の私なら感じられた人間の本能だろう。今の私は理解できず、混乱する。
戻れるなら、最初の私に戻りたい。戻って、色んな事をやりたい。
嫌いだった事、好きだった
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