放浪剣士
魔女を愛した男V
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どうして―――。
私の問いかけに、ベルモンドは答えない。
ただ娘の無事に泣き、抱きしめる母親をじっと見つめるのみ。
何を考えているのだ。
異端者に情報を漏らし、故意に逃亡の猶予を与えるのなどこれは明らかに反逆行為だ。
やがて、重々しく口を開くが、それは私に対してではなかった。
「…行け。こいつが目を醒ます前に」
逃がすと言うのか。
異端者を目の前にして。
私を目の前にして。
駄目だ―――。
私は剣を抜き放ち、親子へとその切っ先を向けた。
分かっているのですか、目の前のそれは異端者。危険な存在だ―――。
私の怒号と、剣を向けられている恐怖で、母親は悲鳴をあげ娘をさらに強く抱きしめる。
「お前こそ、わかっているのか。我々が行っているこれは、名誉ある闘いでもなんでもない。…虐殺だ」
ベルモンドが私の前へと立ちふさがる。
剣こそ抜いてはいないものの、その眼光は私を貫きこの体を硬直させた。
「早く行け。手出しはさせない」
母親はその言葉に娘の手を引き走り出す。
追おうにも、ベルモンドの眼光がそれを許さない。
やがて、親子の姿は闇に消え見えなくなった。
なんということを―――。
私は失望した。
その力に憧れ、その名声に憧れた男は、目の前で完全に反逆者となってしまったのだから。
「お前に問いたい。目の前にいたあの親子は、本当に危険な存在だったのか?」
答えるまでもない。
答えたくもない。
相手は異端者。
危険な存在以外のなにものでもあるわけがない。
じっと睨み付けるだけの私に、ベルモンドは自らの剣を地面へと頬り投げて見せた。
「粛清するがいい。私が間違っていると思うのならば」
潔いものだ。
言われずともと、私は剣をベルモンドへと向ける。
ベルモンドは抵抗する様子もなく、その身を任せ瞳を閉じている。
剣を一振りし、ベルモンドを斬り捨てるだけ。
ただそれだけだった。
だが、できない。
私には、ベルモンドに剣を降り下ろす事ができなかった。
何故かと言われても分からない。
だが私の剣を持つ手は振るえるのみ。
「斬れないのはお前の中に疑念があるからだ」
見透かしたかのように、ベルモンドは私に言う。
「今までお前が斬ってきた中にもいたはず……いや、ほとんどがそうであった筈だ」
ベルモンドは私の剣を掴み、剣先を下へとさげる。
その手からは、血が滴っていた。
「親を…子を…親しい誰かを……あの親子のように、いたわる普通の人間だったのではないか」
ベルモンドは私の…いや、私たちが異端者を狩るにあたり蓋をしていたその疑惑をこじ開けようとしている。
「
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