暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第2.5章 出会いと再会は唐突に
第35話 またいずれ……
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も過小評価はしない。そして、無傷じゃすまない、或いは致命的な一撃を受けるかもしれない。 ……だけど、この者にも、譲れないものもあるのだ。決して譲れない一線があるのだ。

「自分が傷つくくらい何でもない。……あたしの同胞を殺させるよりは、何倍もマシってね!」

 額の赤い石がまるで光り輝いているかのように赤く輝くと、肩に備え付けていた鋼鉄の腕、《マニュピレーター》が妖しく動く。

「雷神雷光!」

 その者が、同じ空間に、ユーリと同じ空間に姿を現した瞬間、計4本ある腕が天へと伸びた。
 その後、1秒にも満たない時間で先ほどの雷撃の10倍、15倍……判らない程の雷撃が降り注いできたのだ。雷の雨、とも呼べる凶悪な魔法。

「避けられるか!?」

 轟きわたる雷。
 全てを飲み込む勢いで、ユーリの四方八方へと降り注いだ。

「………」

 だが、それでもユーリはまだ動かない。
 もう、自分の周囲に雷が落ち続けているのに。まるで、落ちる場所があらかじめ判っていたかの様に、直撃はまだしないと判っていたかの様に。

「コイツ……ッ(何て集中力……!)」

 今撃ち放ったのは、広範囲の雷撃による殲滅魔法だ。
 複数の相手をするのなら絶大な威力を発揮するのもだが、相手は1人。逃げ場を奪う、冷静さを欠けさすには遺憾なく威力を発揮するが、正確性は著しく損なうだろう。だが、それでも迫る雷を見切り、その雷速を反応できるよう人間は有り得ない。……そんな事が出来るなんて、有り得ない筈なのに……。
 
 徐々にユーリの身体に掠める雷撃。幾ら正確性に欠けるとは言っても、それを余って補うのが雷撃の数だ。ついにはユーリの頭上に降り注いだ。

 その瞬間、ユーリは目を見開く。天に向かって斬撃を撃ち放った。

「煉獄・斬魔」

 光を纏った居合いの一撃。

 その一撃は、降り注ぐ雷撃を、断絶し周囲に四散させた。一撃だけじゃない。次々に降り注ぐ雷撃の全てを、かの男に迫る無数の雷の雨を、瞬く間に切り伏せ、四散させていた。
 弾かれた雷が、周囲で暴れまわる。いや、まるで、雷が怖がっているかの様に、怯えているかの様に周囲へと散らり、消えていった。

「……なっ!?」

 目を……見開いていた。

 相手は≪魔法を斬った≫のだ。

 魔法と言うものは、基本的に戦士にとっては、避けるという概念は存在せず、詠唱を、発動を防げ無かったら必ず直撃を受けるといわれているものだ。そう、戦士には防ぐ事は叶わない。対処する方法があるとすれば、同じ魔法使いの援護、或いは自らの身体で堪えるしかない。それが今までの、これまでの常識だ。

 魔には魔、剣には剣。……それは、幾百年経とうが変わらない。

 だが……、その常識を、今一蹴された。
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